診療マル秘裏話    号外Vol.1225 平成30年7月12日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)IT創薬で標的蛋白質阻害の新低分子化合物創出
2)ブドウ種子エキスが腸内フローラ改善しメタボ予防・改善















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 








  
1】 IT創薬で標的蛋白質阻害の新低分子化合物創出









 
 東京大学先端科学技術研究セ
ンター(東大先端研)は6月13
日、コンピュータ上で仮想的に
設計・評価するIT創薬により、
がんの原因となる蛋白質(標的
蛋白質)の阻害活性を持ち、従
来のがん治療薬に抵抗性を示す
がんにも効果が期待できる新規
低分子化合物を創出することに
成功したと発表しました。


この研究は、同センターと、富
士通株式会社、興和株式会社に
よるものです。 IT創薬の共同
研究については、2011年6月に
東大先端研と富士通で開始され、
同年7月に興和が参画しました。
以後、複数の創薬標的に関する
研究を行っています。

今回の共同研究は、従来のがん
治療薬に抵抗性を示すがんに対
しその原因となる蛋白質を創薬
標的として選択し、2015年12月
に開始しました。富士通は、IT
創薬により阻害活性があると予
想される低分子化合物を設計し、
興和は、低分子化合物の合成と
実験による阻害活性測定を行い
ました。 東大先端研は、創薬
標的に関する医学的見地に基づ
く情報を提供するという役割を
担いました。 また、この共同
研究期間中、富士通と株式会社
富士通研究所は、IT創薬技術の
改良を重ね、精度と性能を向上
してきたということです。

今回の共同研究において、富士
通は、標的蛋白質の働きを抑え
る効果があると期待される化学
構造を興和に提供しました。こ
れは、医薬候補化合物設計技術
と今まで培ってきた創薬の知見
を取り入れ、合成可能な低分子
化合物の構造をコンピュータ上
で設計し、高精度活性予測技術
を改良したM2BAR 法(エムスク
エアードバー法)を用いて、低
分子化合物と標的蛋白質の結合
強度を計算して絞り込んだもの
です。これに、量子力学に基づ
く高精度な立体配座解析の結果
も考慮に入れたということです。

興和は、富士通が設計した低分
子化合物を合成しその中に目標
とする阻害活性を示す化合物を
確認しました。 また、興和は
この化合物と化学構造が似てい
る低分子化合物を複数合成し、
一連の化合物にも目標とする阻
害活性を示すことを確認しまし
た。現在、興和はこれら化合物
のX線結晶構造解析による複合
体構造を検証中で、今後、同研
究成果を創薬に結びつけるべく、
今回の研究で得た低分子化合物
を改良していく予定ということ
です。

創薬シュミレーションについて

解説している動画です。

 

 

 

 



 雪渓を回避するよう登頂経路
を設計する。笑













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2】 ブドウ種子エキスが腸内フローラ改善しメタボ予防・改善











 
 東北大学と東京医科歯科大学
は6月15日、ポリフェノールの
一種であるプロアントシアニジ
ンを豊富に含むブドウ種子エキ
スが、閉経女性のモデルである
卵巣摘出マウスにおいて、腸内
フローラを改善し、肥満や糖尿
病を予防・改善する効果を発揮
することを見出したと発表しま
した。この研究は、東北大大学
院歯学研究科先端フリーラジカ
ル制御学共同研究講座の菅野 
太郎教授、東北大名誉教授であ
り東京医歯大大学院医歯学総合
研究科整形外傷外科治療開発学
の庭野吉己寄附講座教授と、同
整形外傷外科治療開発学の麻生
義則寄附講座准教授の研究グル
ープによるものです。研究成果
は、国内科学誌「Journal of M
edical and Dental Sciences」
と米科学誌「Journal of Food 
Science 」にそれぞれ掲載され
ています。

近年、腸内細菌が、食物の消化
活動のみならず、様々な疾患の
原因となることが明らにされて
きました。たとえば腸内細菌叢
は脂質吸収を制御し、肥満者の
腸内細菌を移植されたマウスは
痩身者の腸内細菌を移植された
マウスよりも有意に太ります。
ファーミキューテス門に属する
腸内細菌は、いわゆる「デブ菌」
と呼ばれ、腸内細菌叢における
ファーミキューテス門比率の増
加は、脂肪吸収効率を増加させ
て肥満を招きます。

閉経は肥満や耐糖能低下の危険
因子です。閉経後女性の腹囲は
増加し、内臓脂肪の増加に伴い
耐糖能低下が認められ、メタボ
リックシンドロームの罹患率が
増加しますが、この現象の背景
にある分子メカニズムは十分に
解明されていませんでした。

研究チームは閉経のモデル動物
である、卵巣摘出マウスの腸内
細菌叢を解析しました。 その
結果、「デブ菌」ファーミキュ
ーテス門に属する細菌が腸内に
増加し、痩せ型の人に多く存在
するバクテロイデーテス門に属
する細菌が減少することを見出
しました。

このモデル動物は、内臓脂肪、
皮下脂肪の蓄積による肥満に至
り、血糖値が上昇しましたが、
ブドウ種子エキスを連日摂取さ
せたところ、ファーミキューテ
ス門細菌の増加とバクテロイデ
ーテス門細菌の減少が抑制され、
肥満指数とよばれるファーミキ
ューテス門/バクテロイデーテ
ス門比(F/B 比)が改善しまし
た。 これに伴い、内臓脂肪、
皮下脂肪の蓄積が共に抑制され
たということです。また、内臓
脂肪の蓄積は血糖値上昇の原因
となりますが、ブドウ種子エキ
スの投与により、糖負荷試験時
の血糖値も改善されました。一
方、ブドウ種子エキス投与によ
る、餌の摂取量、筋肉重量や内
臓重量への影響は認められなか
ったということです。

腸内フローラについて解説して

いる動画です。

 

 

 

 



 十両の筋肉重量を図る。笑













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編集後記



 コンピュータ上で、仮想的に
設計・評価するIT創薬により、
がんの原因となる蛋白質(標的
蛋白質)の阻害活性を持ち、従
来のがん治療薬に抵抗性を示す
がんにも効果が期待できる新規
低分子化合物を創出することに
成功したと発表したのは素晴ら
しい業績です。ただ従来のがん
治療薬を耐性を克服させて再び
使うというやり方は、余りお勧
めできません。耐性を克服して
も大きな副作用がある場合は、
患者さんが苦しむ可能性がある
と思われるからです。分子標的
薬の内でも、副作用が少ないも
のを耐性克服するというほうが
望ましいと考えます。
 ポリフェノールの一種である
プロアントシアニジンを豊富に
含むブドウ種子エキスが、閉経
女性のモデルである卵巣摘出マ
ウスにおいて、腸内フローラを
改善し、肥満や糖尿病を予防・
改善する効果を発揮することを
見出したと発表したのは偉大な
業績です。恥ずかしながらデブ
菌即ちファーミキューテス門に
属する細菌と痩せ菌即ちバクテ
ロイデーテス門に属する細菌が
あること自体、知りませんでし
た。前者と後者の比をとること
で、肥満指数と言われることも
知りませんでした。肥満指数を
改善させる効果がブドウ種子の
エキスに存在するなんて、本当
に驚天動地と言わざるを得ませ
ん。

 庁内の人の腸内フローラを、
肥満指数で評価する。笑















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