診療マル秘裏話  号外Vol.1324 平成30年11月4日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)転写因子シグナルがβ細胞へのリプログラミングを制御
2)強心配糖体の抗がんメカニズム解明したと発表















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 








  
1】 転写因子シグナルがβ細胞へのリプログラミングを制御











 順天堂大学は10月9日、転写
因子STAT3 シグナルが、膵前駆
細胞や腺房細胞からインスリン
産生細胞であるβ細胞へのリプ
ログラミングを制御することを
見出し、STAT3 阻害薬を用いて
糖尿病モデルマウスの血糖値を
改善することに成功したと発表
しました。この研究は、同大大
学院医学研究科代謝内分泌内科
学の三浦正樹助手、宮塚健准教
授、綿田裕孝教授らの研究グル
ープによるものです。研究成果
は、英科学雑誌「EbioMedicine」
オンライン版に公開されました。

 糖尿病は、膵β細胞から分泌
されるインスリンの相対的・絶
対的不足により発症します。こ
のことから、糖尿病根治のため
には失われたインスリン分泌を
補う必要があり、インスリン産
生細胞であるβ細胞を補充する
糖尿病再生医療が注目されてい
ます。

 膵前駆細胞や腺房細胞は、β
細胞と同じ発生学的起源を持ち、
β細胞へと分化転換する可塑性
のある細胞です。研究グループ
は先行研究より、ヒトやマウス
の腺房細胞から膵管様細胞への
分化転換で転写因子STAT3 の活
性化が不可欠であることを見出
しました。このことから、膵前
駆細胞や腺房細胞からβ細胞へ
のリプログラミング過程におい
て、STAT3 の活性化が何らかの
役割を担っているのではないか
と考え、マウス膵前駆細胞株と
遺伝子改変マウスを用いて検証
を行いました。

 まず、研究グループは、マウ
ス膵前駆細胞株(mPAC細胞)を
用いてリプログラミング過程に
おけるSTAT3 活性化の役割を、
検討しました。はじめに、転写
因子Pdx1またはMafaをmPAC細胞
に発現させると、STAT3 の活性
化(リン酸化)がみられました。
次に、3つの転写因子Pdx1、Neu
rog3、Mafaを同時にmPAC細胞に
発現させるとβ細胞新生が誘導
されましたが、β細胞ではSTAT
3 の活性化は抑制されていまし
た。このことから、3つの転写
因子が発現した細胞で、STAT3
シグナルを抑制することがβ細
胞新生を誘導するという仮説を
立てたということです。そこで、
Pdx1、Neurog3、Mafa を発現さ
せたmPAC細胞でアデノウイルス
やSTAT3阻害薬を用いてSTAT3シ
グナルを抑制した所、β細胞数
が増加し、反対にSTAT3 を恒常
的に活性化させるとβ細胞数は
減少したということです。これ
らの結果は、STAT3 シグナルの
活性化がβ細胞へのリプログラ
ミングを負に制御する事を示唆
しています。

 次に、生体内におけるSTAT3 
の役割を検討するために、β細
胞新生モデルマウスでStat3 遺
伝子を欠失させたところ、Stat
3 欠失マウスの膵臓では新生β
細胞数が増加し、複数の新生β
細胞が一塊となった膵島様構造
を形成することが判明しました。
さらに、糖尿病モデルマウスの
膵臓にアデノウイルスを用いて
Pdx1、Neurog3、Mafa を発現さ
せ、STAT3 阻害薬(BP-1-101)
を投与することで高血糖を改善
することに成功したということ
です。

 現在、STAT3 阻害薬は抗悪性
腫瘍薬としての臨床応用が期待
されており、同薬の安全性が確
立された場合、糖尿病再生医療
への応用も期待できるという事
です。研究グループは、今回の
研究成果をもとに、より多くの
β細胞を効率的に作製すること
により、糖尿病根治に向けた新
たな治療法を開発していきたい
としています。

新しい2型糖尿病のモデルマウ

スの動画です。

 

 

 

 



 懸賞金について妥当かどうか
検証する。笑














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2】 強心配糖体の抗がんメカニズム解明したと発表














 富山大学は9月18日、心不全
治療薬として使用されている強
心配糖体の抗がんメカニズムを
明らかにしたと発表しました。
この研究は、同大大学院医学薬
学研究部(薬学)薬物生理学研
究室の藤井拓人助教、酒井秀紀
教授(薬学部長)らの研究グル
ープによるものです。研究成果
は、国際科学誌「BBA-Molecula
r Basis of Disease」電子版に
掲載されました。

 これまでの疫学的研究におい
て、ジギトキシンやジゴキシン
といった強心配糖体を服用して
いる心不全患者さんが、がんを
発症した場合、がんの悪性度が
低いこと、がんの再発率が低下
すること、患者さんの5年生存
率が高くなることなどが確認さ
れていました。そのため、世界
的に強心配糖体の抗がん作用に
関連する多くの研究が行われて
きましたが、強心配糖体の抗が
んメカニズムについては未解明
なままでした。

 今回、研究グループは、がん
細胞の細胞膜の特別な微小領域
(膜マイクロドメイン)に、が
ん細胞に特異的な膜輸送蛋白質
複合体が存在している事を発見
しました。強心配糖体が、この
複合体の受容体型ナトリウムポ
ンプに結合し、細胞容積調節ア
ニオンチャネルを異常に活性化
させ、抗がんシグナルを発生す
ることを突き止めたということ
です。このようなメカニズムは、
通常の細胞には存在しないこと
も確認されたとしています。

 今後、膜輸送蛋白質複合体を
ターゲットにした創薬研究を進
めることで、がん細胞に選択的
な新たな治療薬の開発につなが
る可能性がある、と研究グルー
プは述べています。

がん発生のメカニズムについて

解説している動画です。

 

 

 

 



 微小領域の可愛さに微笑する。
















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編集後記




 転写因子STAT3 シグナルが、
膵前駆細胞や腺房細胞からイン
スリン産生細胞であるβ細胞へ
のリプログラミングを制御する
ことを見出し、STAT3 阻害薬を
用いて、糖尿病モデルマウスの
血糖値を改善することに成功し
たと発表したのは、偉大な業績
です。STAT3 阻害薬については、
抗悪性腫瘍薬としての臨床応用
が期待されており、同薬の安全
性が確立された場合、糖尿病再
生医療への応用も期待できると
いう事ですので、是非その方向
で、糖尿病再生医療への応用に
邁進して頂きたいものです。
 心不全治療薬として使用され
ている強心配糖体の抗がんメカ
ニズムを明らかにしたと発表し
たのは、素晴らしい業績です。
これまでの疫学的研究において、
ジギトキシンやジゴキシンとい
った強心配糖体を服用している
心不全患者さんが、がんを発症
した場合、がんの悪性度が低い
こと、がんの再発率が低下する
こと、患者さんの5年生存率が
高くなることなどが確認されて
いたというのは初耳でした。癌
細胞の細胞膜の特別な微小領域
(膜マイクロドメイン)に、が
ん細胞に特異的な膜輸送蛋白質
複合体が存在している事を発見
し、強心配糖体が、この複合体
の受容体型ナトリウムポンプに
結合し、細胞容積調節アニオン
チャネルを異常に活性化させ、
抗がんシグナルを発生すること
を突き止めたということですか
ら、ぜひ膜輸送蛋白質複合体を
ターゲットにした創薬研究を進
めることで、がん細胞に選択的
な新たな治療薬の開発に繋げて
頂きたいものです。

 強心配糖体を発売している、
製薬会社の配当が上がる。笑















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