診療マル秘裏話  号外Vol.1770 令和2年4月7日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)感度63.2%、特異度90.0%の肝がんの診断検査
2)がん細胞の遊走・浸潤、放射線抵抗性促進分子















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 感度63.2%、特異度90.0%の肝がんの診断検査











 山口大学は3月11日、肝細胞
がんの診断ツールとして、SEPT
9 遺伝子をターゲットとし、血
清0.4mL と微量検体で定量測定
の可能な高感度メチル化解析法
を開発、さらに、同解析法が、
肝がん診断の検査感度63.2%、
特異度90.0%であり、早期のが
んでも41.7~58.0%と高い検出
能力を示したと発表しました。
この研究は、同大大学院医学系
研究科臨床検査・腫瘍学講座の
山崎隆弘教授、末廣 寛准教授、
消化器内科学講座の坂井田功教
授、および消化器・腫瘍外科学
講座の永野昭浩教授らの研究グ
ループによるものです。研究成
果は、米国肝臓学会(AASLD )
の機関紙「Hepatology Communi
cations 」の電子版に掲載され
ています。在、国内では年間約
2.7 万人が肝細胞がん(肝がん)
で亡くなっています。以前の肝
がんの原因はウイルス肝炎、特
にC型肝炎ウイルス(HCV)が主
でしたが、HCV の排除が可能と
なり、非ウイルス性肝がん(NB
NC肝がん)が増加しています。
しかし、NBNC肝がんのスクリー
ニング検査は存在せず、進行肝
がんの比率が増加しており、新
たなスクリーニング検査の開発
が切望されてきました。その候
補としてリキッドバイオプシー
検査がありますが、肝がん診断
のリキッドバイオプシー検査は
実用化されていません。

がんは遺伝子の異常により起こ
る病気であり、その遺伝子異常
の1つとしてDNA(遺伝子)メチ
ル化があります。米国では大腸
がんのスクリーニング検査とし
てメチル化SEPT9 の定性検査で
ある「Epi proColon」が承認さ
れており、同検査が肝がん診断
に有用との報告もありますが、
同検査法はわが国では認可され
ていません。しかし、同検査に
は約4mL の多量血漿が必要で、
定量性がないなどの問題点があ
ります。研究グループは、それ
らの問題点を解消したSEPT9 高
感度メチル化解析法を開発し、
微量検体(血清0.4mL )で、か
つ高感度な定量化に成功しまし
た。そして今回、肝がんに対す
るSEPT9 高感度メチル化解析法
の有用性を検証しました。

まず、保存血清からDNA を抽出
し、独自に開発した高感度メチ
ル化解析法(特許出願)で、SE
PT9 メチル化レベルを定量しま
した。3種類のメチル化感受性
制限酵素で処理すると、メチル
化DNA は残存するため、デジタ
ルPCR を用いることで、従来技
術の100 倍の感度で定量化が可
能となります。対象は、健常コ
ントロール80人、肝がんのない
慢性肝障害患者さん45人、肝が
ん患者さん136人の計261人です。
中央値は、健常コントロール0.
0 コピー、慢性肝障害2.0 コピ
ー、肝がん6.4 コピーと肝がん
患者さんで有意に上昇を認めま
した。健常コントロールと肝が
ん患者さんにおけるROC 解析に
て、4.6 コピーをカットオフ値
とした場合、検査感度63.2%、
特異度90.0%が得られました。

肝がんの進展(BCLCステージ0/
A, 超早期/早期肝がん;ステー
ジB, 中等度肝がん;ステージC,
進行肝がん)に伴い陽性率は上
昇しましたが、ステージ0/A で
もそれぞれ41.7/58.0%と高い検
出感度を示しました。またNBNC
肝がんの検出感度も66.7%と、
ウイルス肝炎関連肝がんの検出
感度と遜色ない結果でした。

研究グループは、「開発した新
たなリキッドバイオプシー検査
は、簡便かつ微量検体測定可能
で低コストの検査法であり、NB
NC肝がんのスクリーニング検査
としても有用ではないかと考え
ている。今後、実用化に向けた
研究を展開していく予定だ」と、
述べています。

肝臓がんの前兆と症状について

解説している動画です。

 

 

 

 



 健常人が謙譲の心を表す。笑















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2】 がん細胞の遊走・浸潤、放射線抵抗性促進分子











 広島大学は3月12日、低酸素
環境において活性化し、がん細
胞の遊走・浸潤を促進、放射線
抵抗性を促進する分子「GLIS1 」
を発見したと発表しました。こ
れは、同大原爆放射線医科学研
究所放射線災害医療開発研究分
野の島本和美大学院生、谷本圭
司講師、廣橋伸之教授、情報・
システム研究機構データサイエ
ンス共同利用基盤施設ライフサ
イエンス統合データベースセン
ターの坊農秀雅特任准教授、小
野浩雅特任助教、順天堂大学大
学院江口英孝准教授らの研究グ
ループによるもの。研究成果は、
英国のオックスフォード大学出
版局科学誌「Carcinogenesis」
に掲載されています。高山病に
代表される環境中の酸素低下の
みならず、貧血、心臓や血管(
循環器)の疾患、肺の疾患、糖
尿病、がんなどで、酸素供給不
足による組織中の低酸素化が疾
患発症や増悪と関係することも
わかってきています。低酸素環
境下のがん細胞は、劣悪な環境
を生き延びる手段として低酸素
応答性転写因子などを悪用し、
より悪性度の高い(治療が効き
にくい、浸潤・転移しやすい)
がんに変化することが知られて
います。また、固形がんの中で
も乳がんは、ホルモン療法や新
しい分子標的治療法が有効な、
近年飛躍的に予後が改善してい
るがんでありますが、ホルモン
療法や分子標的薬が効かない進
行乳がんは、未だ有効な治療法
が確立されておらず、治療法開
発に向けて、多くの研究が進め
られています。

低酸素に対する生体反応の研究
は、1995年に低酸素応答性転写
因子「HIF-1 」が発見されたこ
とにより劇的に前進しました。
これら一連の低酸素応答機構の
研究は、生命の酸素利用機構の
解明に貢献したとして、2019年
のノーベル医学賞を受賞しまし
た。研究グループは、1998年か
ら継続的に低酸素応答機構の解
明研究に取り組んできており、
2013年には、本研究につながる
研究として、「GLIS1 」遺伝子
が低酸素環境で増加することや、
その詳細な機構を解明して発表
しました。また、低酸素環境下
ではどのような遺伝子発現量が
増加し、どのような遺伝子の発
現量が減少するのか、それらは
細胞の中でどのような働きをし
ているのか、さまざまな手法を
用いて研究を進めてきました。
研究グループは今回、低酸素環
境下で増加したGLIS1 が、がん
細胞中でどのような働きをして
いるかについて、遺伝子レベル
で人工的に増減して調べました。
その結果、GLIS1 は、がん細胞
の増殖を少し遅くする働きがあ
るようでしたが、明らかに、が
ん細胞の運動性や浸潤性を促進
しました。さらに、GLIS1 を人
工的に増やしたがん細胞では、
浸潤に関わる遺伝子「WNT5A 」
や、放射線応答に関わる遺伝子
「CDKN1A」の発現量が増加し、
細胞の浸潤能力を高めたり、放
射線を照射しても死ににくくな
ったりしていることが確認され
ました。一方、GLIS1 を人工的
に抑制すると、浸潤能力が低下
することも明らかになり、GLIS
1 の人工的な機能調節が治療に
結びつく可能性を示しました。
遺伝子発現データベースとがん
患者さん予後の解析ウェブツー
ル「Kaplan-Meier Plotter 」
により、乳がん患者さん全体や
ホルモン受容体を持つ乳がん患
者さんでその差は見られない一
方で、ホルモン受容体を持たな
い進行乳がん患者さんにおいて
はGLIS1 発現量の高く、がん患
者さんの予後が明らかに悪い(
生存期間が短い)ことが明らか
となりました。さらに、正常組
織における遺伝子発現の大規模
測定データベースの比較ウェブ
ツール「RefEx 」によって、低
酸素環境で働く他の転写因子HI
F-1 などに比べて、GLIS1 は特
に正常細胞における発現量が少
ないことが明らかとなり、副作
用の少ない(GLIS1 の人工的な
抑制を行なっても正常細胞に影
響が少ない)がん治療標的とな
り得る可能性が示されました。

今回、低酸素環境下の乳がん細
胞においてGLIS1 が、浸潤・転
移や、放射線などの治療抵抗性
獲得に関わり、特に進行乳がん
において、治療標的となり得る
という結果を得ました。「今後、
GLIS1 機能(量)を人工的に抑
制する方法(核酸医薬、既存・
新規の薬や化合物)の開発や、
さらなるGLIS1 機能の詳細を明
らかにすることにより、GLIS1
を人工的に抑制したときの副反
応の予測が可能となる」と研究
グループは述べています。

がんの転移について解説してい

る動画です。

 

 

 

 



 昨日の機能について考える。














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編集後記


 山口大学が3月11日、肝細胞
がんの診断ツールとして、SEPT
9 遺伝子をターゲットとし、血
清0.4mL と微量検体で定量測定
の可能な高感度メチル化解析法
を開発、さらに、同解析法が、
肝がん診断の検査感度63.2%、
特異度90.0%であり、早期のが
んでも41.7~58.0%と高い検出
能力を示したと発表したのは、
素晴らしい業績です。リキッド
バイオプシーの研究は、世界中
でしのぎを削っています。それ
は、確定検査である生検が、大
きな苦痛を患者さんに与える割
りには、偽陰性を多く生じると
いう背景があるからです。
 広島大学が3月12日、低酸素
環境において活性化し、がん細
胞の遊走・浸潤を促進、放射線
抵抗性を促進する分子「GLIS1 」
を発見したと発表したのは、素
晴らしい業績です。低酸素環境
で働く他の転写因子HIF-1 など
に比べて、GLIS1 は特に正常細
胞における発現量が少ないこと
が明らかとなり、副作用の少な
い(GLIS1 の人工的な抑制を行
なっても正常細胞に影響が少な
い)がん治療標的となり得る可
能性が示されたことは喜ばしい
ことです。今後の研究でGLIS1
の人工的な抑制について具体的
な進展があることを大いに期待
したいと思います。

 人間関係に進展があると予測
して、親展の手紙をしたためた。















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