診療マル秘裏話  号外Vol.2043 令和3年2月20日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)ガン細胞のみに細胞死誘導する,化合物のメカニズム
2)過飽和はアミロイド線維形成を抑制することを解明












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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 








 
1】 ガン細胞のみに細胞死誘導する,化合物のメカニズム











 近畿大学は1月28日、ガン細
胞のみに細胞死(アポトーシス)
を誘導する化合物「ACA-28」の
メカニズムを解明したと発表し
ました。この研究は、同大薬学
部創薬科学科の杉浦麗子教授ら
の研究グループが、兵庫医療大
学薬学部と共同で行ったもので
す。研究成果は、「Genes to C
ells」に掲載されています。

 ガン細胞では、増殖を司るER
K MAPキナーゼ(以下、ERK)の
働きが活発になっていることか
ら、ERK の働きを阻害する抗ガ
ン剤の開発が精力的に行われて
きました。研究グループは、独
自の創薬手法により化合物「AC
A-28」を取得しました。ACA-28
が悪性黒色腫(メラノーマ)な
どのERK が活性化しているガン
細胞を特異的に細胞死に誘導す
ることから、その作用を探って
いました。

 今回、研究グループは、ガン
細胞においてERK の活発な働き
に拮抗するために、ERK の働き
にブレーキをかける酵素DUSPの
量が増えることに着目しました。
ACA-28とDUSPの関係を調べまし
た。

 研究の結果、ACA-28は、DUSP
の蛋白質分解を介して、DUSPの
蛋白質量を減少させていること
が判明しました。

 ACA-28は、DUSPが高発現して
いるガン細胞の増殖を阻害する
のに対して、正常細胞に対する
影響は限定的でした。一方、DU
SP遺伝子をノックダウンし、DU
SP蛋白質発現を減少させること
でも、ACA-28同様に、ガン細胞
選択的な増殖阻害が起こったと
いうことです。

 現在までの抗ガン剤開発は、
ガン細胞で活発になっている「
アクセル」の働きを止める薬剤
の開発が主流です。「今回の発
見は、ガン細胞の「ブレーキ」
であるDUSPの発現量を制御する
ことにより、副作用の少ない新
たなガン治療戦略につながるこ
とが期待される」と研究グルー
プは述べています。

悪性黒色腫の再発・転移時の

治療について解説している動画

です。

 

 

 



 腫瘤の治療法は、クロノテラ
ピーが主流です。     笑














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2】 過飽和はアミロイド線維形成を抑制することを解明















 大阪大学は1月26日、蛋白質
が機能的な天然(ネイティブ)
構造を形成するか、あるいはア
ミロイド病の原因となるアミロ
イド線維を形成するかの分かれ
目に、「過飽和」現象があり、
その過飽和はアミロイド線維の
形成を抑制していることを明ら
かにしたと発表しました。これ
は、同大国際医工情報センター
の後藤祐児特任教授の研究グル
ープと、大阪大学蛋白質研究所
の野地真広大学院生(2020年3
月理学研究科博士課程修了、現
在は京都大学人間・環境学研究
科研究員)、神戸大学、鳥取大
学、産業技術総合研究所、エト
ヴェシュ・ロラーンド大学(ハ
ンガリー)、ユニバーシティ・
カレッジ・ロンドン(英国)、
ミュンヘン工科大学(ドイツ)、
オーフス大学(デンマーク)が
行った共同研究によるものです。
研究成果は、「Communications
Biology」にオンライン掲載さ
れています。

 アミロイド線維は、高齢化社
会の深刻な問題であるアルツハ
イマー病やパーキンソン病のほ
か、透析アミロイドーシスなど
一連のアミロイド病の原因物質
として世界で研究が進んでいま
す。特に最近はクライオ電顕や
固体NMR などの構造解析によっ
て原子レベルの立体構造が次々
と明らかになってきています。

 アミノ酸が一次元につながっ
た高分子鎖である蛋白質は、「
アンフィンセンのドグマ」に従
い、フォールディングして機能
します。一方、蛋白質はアミロ
イド線維と呼ばれる針状の凝集
体を形成することがあります。
アミロイド線維の形成は、フォ
ールディングと対比して「ミス
フォールディング」と呼ばれま
す。病気と関係しない卵白リゾ
チームなどの蛋白質もアミロイ
ド線維を形成することが分って
います。現在、アミロイド線維
の原子構造が次々と明らかにな
っていますが、フォールディン
グとミスフォールディングの分
かれ目を何が決めるのかは不明
でした。

 研究では、十数種類の蛋白質
を用いて、20-90℃におけるア
ミロイド形成を調べました。多
くの蛋白質は「室温(25℃)→
高温(90℃)→室温」の操作を
したとき、アンフィンセンのド
グマに従う「天然構造→変性構
造→天然構造」の可逆的な構造
変化を示しました。しかし、ア
ジテーション(溶液の撹拌)を
加えながら高温処理をすると、
高温においてアミロイド線維を
形成しました。この研究から、
変性した蛋白質は過飽和状態に
あり、過飽和が解消されるとア
ミロイド線維の形成に至ること
が分かりました。

 アミロイド線維の形成が、水
に溶けた物質の結晶形成に似た
現象であることは、長年にわた
って知られていました。過飽和
は結晶形成に必要不可欠です。
水が氷になる反応も過飽和(過
冷却とも呼ばれる)を経て起き
ます。別の見方をすると、過飽
和がアミロイド線維形成を抑制
しており、これが解消するとア
ミロイド線維が形成され、さら
には、アミロイド病の発症に至
ることが示唆されました。

 「アミロイド病は高齢化社会
の深刻な病気であり、その予防
や治療は重要な研究課題である。
研究成果はアミロイド病の予防
や治療の進展につながるととも
に、蛋白質の構造と物性の理解
を大きく広げるものだ」と、研
究グループは述べています。

 アンフィンセンのドグマとは、
「蛋白質の立体構造はアミノ酸
配列さえ決まれば決定する」、
別の言い方をすると「蛋白質は
エネルギー最小の状態に勝手に
折れたたむ(フォールディング
する)」というものです。

 研究成果が得られず失敗の終
わったのは、凡ミスのせいか?














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編集後記




 近畿大学が1月28日、ガン細
胞のみに細胞死(アポトーシス)
を誘導する化合物「ACA-28」の
メカニズムを解明したと発表し
たのは、素晴らしい業績です。
現在までの抗ガン剤開発は、ガ
ン細胞で活発になっている「ア
クセル」の働きを止める薬剤の
開発が主流です。「今回の発
見は、ガン細胞の「ブレーキ」
であるDUSPの発現量を制御する
ことにより、副作用の少ない新
たなガン治療戦略につながるこ
とが期待されるそうですから、
逆転の発想と言うことができる
でしょう。ここまでの発想の転
換は、本当にコロンブスの卵と
言っても過言ではないでしょう。
 大阪大学が1月26日、蛋白質
が機能的な天然(ネイティブ)
構造を形成するか、あるいはア
ミロイド病の原因となるアミロ
イド線維を形成するかの分かれ
目に、「過飽和」現象があり、
その過飽和はアミロイド線維の
形成を抑制していることを明ら
かにしたと発表したのは、素晴
らしい業績です。研究成果はア
ミロイド病の予防や治療の進展
につながるとともに、蛋白質の
構造と物性の理解を大きく広げ
るものという研究者の言葉は、
的を得たものとなっています。
過飽和の状態を維持してアミロ
イド線維の形成を極力抑制する
治療を期待したいと思います。

 過飽和が減少する現象により、
アミロイド病が発症した。 笑














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