診療マル秘裏話  号外Vol.1725 令和2年2月15日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)代謝酵素ががん細胞増殖を促進することを解明
2)小児院外心停止患者に,救急隊アドレナリン投与効果














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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 代謝酵素ががん細胞増殖を促進することを解明











 大阪大学は1月20日、中枢神
経系でのみ機能が明らかにされ
ていた代謝酵素「セリンラセマ
ーゼ」が、大腸がんにおいてL-
セリンからピルビン酸を産生す
る新たながん代謝経路を担い、
がん細胞の増殖を促進すること
を明らかにしたと発表しました。
この研究は、同大大学院医学系
研究科の大島健司助教、森井英
一教授(病態病理学)らの研究
グループによるものです。研究
成果は、英国科学誌「Nature M
etabolism」に掲載されています。

近年、がん細胞が代謝を改変す
ることで、自身の生存、増殖、
転移などに有利な形質を獲得す
ることが明らかにされています。
これまで、L-セリンを含むアミ
ノ酸あるいは解糖系の産物であ
るピルビン酸が、がん細胞の増
殖において重要な役割を果たす
ことが報告されてきました。し
かし、L-セリンからピルビン酸
が産生される代謝経路が、がん
細胞で機能しているかどうかは
明らかになっていませんでした。

そこで、研究グループは今回、
中枢神経系でのみ機能が明らか
にされてきた、L-セリンからピ
ルビン酸を産生する酵素活性を
有する代謝酵素であるセリンラ
セマーゼに着目しました。大腸
がんにおける機能を解析しまし
た。研究グループは、代謝酵素
セリンラセマーゼの発現量が大
腸がん、大腸腺腫組織で増加し
ていることを確認しました。ゲ
ノム編集技術などを用いて、大
腸がんにおけるセリンラセマー
ゼの機能解析を行いました。そ
の結果、セリンラセマーゼが大
腸がん細胞においてL-セリンか
らピルビン酸を産生し、ヒスト
ンのアセチル化やミトコンドリ
アの量・質の維持あるいは抗ア
ポトーシス作用など、さまざま
な細胞機能に影響を与え、大腸
がん細胞の増殖を促進している
ことが判明しました。また、セ
リンラセマーゼ阻害剤の投与で、
大腸がん細胞の増殖が抑制され
ました。これらの研究結果から
、L-セリンからピルビン酸が産
生される新規の代謝経路が大腸
がん細胞の増殖を促進し、治療
標的になり得ることが示された
としています。

今回、大腸がん細胞の増殖を促
進するL-セリンからピルビン酸
が産生される新たな代謝経路が
解明されたことで、その代謝経
路を標的とした新たな治療法の
開発が期待される、と研究グル
ープは述べています。

大腸がんの早期発見について

解説している動画です。

 

 

 

 



 辛気臭い顔で新規の代謝経路
を発見する。       笑















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2】 小児院外心停止患者に,救急隊アドレナリン投与効果











 大阪大学は1月15日、小児の
院外心停止患者に対する救急隊
によるアドレナリン投与の効果
を、新しい解析手法である「時
間依存傾向スコア連続マッチン
グ解析法」を用いて評価した結
果、救急隊到着時の1次救命処
置で自己心拍が再開しなかった
心停止患者のうち、アドレナリ
ン投与を行うことが心停止後の
自己心拍再開の改善に関連する
ことを示したと発表した。これ
は、同大大学院医学系研究科の
小向翔助教(医学統計学)、北
村哲久助教(環境医学)と京都
府立医科大学大学院医学研究科
の松山匡助教(救急・災害医療
システム学)らの研究グループ
によるもの。研究成果は、米国

心臓病学会雑誌「Journal of t
he American College Cardiolo
gy」のオンライン版に掲載され
ています。病院外で心停止を起
こした患者さんに対して、救急
隊は胸骨圧迫などの心肺蘇生行
為やAED (体外式自動除細動器)
を用いた電気ショックといった
1次救命処置だけでなく、自己
心拍再開が達成できない心停止
患者さんに対しては、静脈路か
らのアドレナリン投与や声門上
気道確保器具や気管挿管チュー
ブを用いた高度気道確保といっ
た2次救命処置を行います。日
本では、8歳以上の院外心停止
患者さんに対してアドレナリン
投与を実施することが法的に許
可されていますが、院外心停止
患者さんに対するアドレナリン
投与は、救急隊によって行われ
る重要な蘇生行為であるにもか
かわらず、17歳以下の小児の院
外心停止患者の効果については
十分に評価されていませんでし
た。

研究グループは、アドレナリン
投与が行われた時刻に着目しま
した。日本の救急隊によるアド
レナリン投与は、1次救命処置
によって自己心拍が再開した心
停止患者さんに対しては行われ
ていません。つまり、自己心拍
が再開せず、蘇生行為が長くな
ればなるほどアドレナリン投与
を受けやすくなるため、自己心
拍が再開しない予後不良群の方
がアドレナリン投与を受けやす
くなるという「蘇生時間バイア
ス」という問題が生じます。そ
こで研究グループは、この蘇生
時間バイアスを克服するために、
傾向スコアマッチング解析を応
用し、アドレナリン投与された
時間ごと(1分ごと)に傾向ス
コアを算出し、同じタイミング
でアドレナリン投与された群と、
まだされていない群をマッチさ
せることで、蘇生時間バイアス
を減らす手法(時間依存傾向ス
コア連続マッチング解析)を新
たに導入しました。今回の研究
は、総務省消防庁の全国院外心
停止患者登録データを用いて実
施されました。2007~2016年の
10年間で、解析対象となる日本
の8~17歳の小児の院外心停止
患者さんは3,961 人で、そのう
ち7.7%(306/3961人)がアド
レナリン投与を受けていました。

解析の結果、アドレナリン投与
を受けた群の方が、受けなかっ
た群に比べ、院外心停止後の自
己心拍再開率は有意に高いこと
が判明しました。一方、院外心
停止発生1か月後の生存率や社
会復帰率もアドレナリン投与を
受けた群の方が受けなかった群
に比べて高い傾向にありました
が、統計学的に有意な差はあり
ませんでした。

今回の研究成果は、救急隊によ
る病院前救護活動のひとつであ
るアドレナリン投与の有効性を
示す本研究結果は、小児の院外
心停止患者に対する救急隊によ
る2次救命処置の重要性を明ら
かにするとともに、院外心停止
患者さんの蘇生率向上のための
エビデンスとして、国際心肺蘇
生ガイドラインの改定にも大き
な影響を与えると考えられます。

研究グループは、「本研究は、
国際心肺蘇生ガイドラインに影
響を及ぼすものとして重要であ
るとともに、観察研究における
治療や薬剤の有効性を評価する
場合において、それらの時間を
考慮することの重要性も示す結
果として意義のある研究と考え
る。また、日本におけるアドレ
ナリン投与された小児の院外心
停止患者の割合は低いため、今
後アドレナリン投与された小児
の院外心停止患者の割合が増え
れば、自己心拍再開そして社会
復帰する小児の院外心停止患者
がさらに増えることが期待され
る」と、述べていました。

小児救急について解説している

動画です。

 

 

 

 



 氷菓の味を評価する。笑













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編集後記


 大阪大学が1月20日、中枢神
経系でのみ機能が明らかにされ
ていた代謝酵素「セリンラセマ
ーゼ」が、大腸がんにおいてL-
セリンからピルビン酸を産生す
る新たながん代謝経路を担い、
がん細胞の増殖を促進すること
を明らかにしたと発表したのは、
素晴らしい業績です。先日、私
のメルマガで、セリンが、潰瘍
性大腸炎に対して、症状増悪に
寄与しているとの話を書きまし
たが、後になって、ガン細胞の
増殖を促進するということが分
かるなんて、驚き、桃の木、山
椒の木です。
 大阪大学が1月15日、小児の
院外心停止患者に対する救急隊
によるアドレナリン投与の効果
を、新しい解析手法である「時
間依存傾向スコア連続マッチン
グ解析法」を用いて評価した結
果、救急隊到着時の1次救命処
置で自己心拍が再開しなかった
心停止患者さんのうち、アドレ
ナリン投与を行うことが心停止
後の自己心拍再開の改善に関連
することを示したと発表したの
は、素晴らしい業績です。その
ようなエビデンスがあるなら、
もっと救急隊がアドレナリンを
使えるようにするべきだと考え
ます。

 子貢が思考停止の様相を呈し
た。笑














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