診療マル秘裏話  号外Vol.1825 令和2年6月11日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)p53遺伝子変異で,大腸がん肝転移促進機構解明
2)便検体から腸内細菌と認知機能との関連を解析















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 p53遺伝子変異で,大腸がん肝転移促進機構解明












 金沢大学は5月19日、「p53遺
伝子」の特異的な変異パターン
による、大腸がんの肝転移促進
機構の解明に成功したと発表し
ました。これは、同大ナノ生命
科学研究所/がん進展制御研究
所の中山瑞穂助教、大島正伸教
授、ソウル大学のSeong-Jin Ki
m 教授の共同研究グループによ
るものです。研究成果は「Natu
re Communications 」オンライ
ン版に掲載されています。がん
は、遺伝子変異の蓄積が原因で
発生すると考えられています。
その中でも、がん細胞増殖を抑
制するp53 遺伝子は、多くのが
んで変異が認められる重要な「
がん抑制遺伝子」として知られ
ています。一方、遺伝子変異に
よりアミノ酸配列が変化した変
異型p53 は、新規に発がん促進
機能を獲得していることが知ら
れており、「Gain-of-Function
(GOF)」 型変異と呼ばれてい
ます。しかし、本来のp53 によ
るがん抑制機能の欠損とGOF 型
変異p53 による作用が、どのよ
うに相関して発がんや悪性化の
促進に関わっているのかは、未
だ報告がありません。生体内で
のがん細胞悪性化を再現するモ
デルが開発されていなかったこ
とが、研究が進まない大きな理
由の1つと考えられます。研究
グループは以前に、大腸がん発
生に重要な4種類の遺伝子変異
をマウス腸管上皮細胞に導入し、
転移能を獲得したオルガノイド
を樹立しています。オルガノイ
ドを構成するがん細胞は対立染
色体上の片側のp53遺伝子にGOF
変異が導入されており、もう一
方には野生型p53 遺伝子が残っ
ています。今回、オルガノイド
をマウスに移植して形成される
肝転移巣の解析により、野生型
p53 遺伝子を欠損したがん細胞
が選択的に転移再発しているこ
とが判明しました。

また、オルガノイドの解析によ
り、GOF型変異p53の発現に加え
て、野生型p53 遺伝子を欠損し
たがん細胞は、オルガノイド構
造が著しく変化し、転移組織で
の生存率が顕著に高くなること
が、転移巣形成促進に作用する
と考えられました。さらに、遺
伝子発現解析により、以上の特
異的なp53 変異パターンが幹細
胞性と炎症/増殖に関するシグ
ナルの亢進を誘導し、それが転
移を促進する可能性も示唆され
ました。

大腸がんに限らず、多くのがん
組織ではp53のGOF型変異が検出
され、悪性化が進行したがん細
胞では野生型p53 が欠損してい
ます。それぞれの現象が、がん
の悪性化に関係していると考え
られますが、本研究により、そ
れらの相互作用が転移促進の鍵
になることが初めて明らかにな
りました。「GOF型変異のp53の
機能を阻害することで転移巣形
成を抑制できる可能性がある。
将来的な大腸がん肝転移に対す
る新規予防・治療薬の開発戦略
に大きく貢献できるものと期待
する」と、研究グループは述べ
ています。

p53について解説している実験

医学の広告動画です。

 

 

 

 



 賛成意見の減少の現象を説明
する。          笑












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2】 便検体から腸内細菌と認知機能との関連を解析












 国立長寿医療研究センターは
5月19日、もの忘れ外来を受診
した患者さんの便検体を収集し、
バイオバンクに保存された臨床
情報を活用して、腸内細菌と認
知機能との関連を解析しました。
その結果、腸内細菌の代謝産物
が認知症と強く関連することを
見出したと発表しました。これ
は、同センターもの忘れセンタ
ーの佐治直樹副センター長が、
東北大学、久留米大学、株式会
社テクノスルガ・ラボと協力し
て行ったものです。研究成果は、
「Scientific Reports」に掲載
されています。認知症の病態解
明や治療薬の開発などを目標に、
2016年から同センターを中心に
オレンジレジストリ研究が開始
され、認知症制圧のためのさま
ざまな研究が展開されています。
今回の研究も、認知症に関する
現在進行中の臨床研究の1つで
す。

近年、腸内細菌は消化管の病気
や免疫などの身体システムに影
響することが分かってきました。
研究グループも以前、認知症の
有無により腸内細菌の組成(腸
内細菌叢)が大きく変化すると
いう知見を発表していますが、
腸内細菌が認知機能にどのよう
に影響するかについては未解明
でした。研究グループは今回、
同センターもの忘れ外来を受診
した患者さんに認知機能検査や
頭部MRI 検査などを実施し、検
便サンプルを同センター・バイ
オバンクに収集しています。T-
RFLP法で腸内細菌を解析し、液
体クロマトグラフィーなどで代
謝産物の濃度を測定しました。

そして、代謝産物と認知症との
関連について統計学的に分析し
ました(久留米大学室谷健太准
教授)。その結果、アンモニア
などの代謝産物は認知症におい
て有意に増加し(オッズ比1.6
倍)、乳酸は減少していた(オ
ッズ比0.3 倍)。これらの関連
は、多変量解析によって既知の
危険因子を調整しても同様の傾
向でした。これは、年齢など、
よく知られている認知症の危険
因子とは独立して、糞便中のア
ンモニアや乳酸が認知症と関係
することを示唆しています。現
在、東北大学の都築毅准教授と
共同で、食事や栄養と腸内細菌
の関連についても解析中だとい
うことです。

今回の研究で分かった「腸内細
菌の代謝産物が認知機能に関連
する」という新しい知見は、認
知症の機序解明に役立つ可能性
があります。研究グループは、
「特に、認知症で糞便中の乳酸
が低下していたという新しい発
見は、新規予防法の開発への糸
口になるかもしれません。オレ
ンジレジストリ研究は、認知症
に関する研究基盤になっており、
今後も、この研究基盤を利活用
した研究の推進が期待される」
と、述べています。

腸脳相関について解説している

動画です。

 

 

 

 



 庁内の人の腸内細菌を調査す
る。           笑














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編集後記



 金沢大学が5月19日、「p53遺
伝子」の特異的な変異パターン
による、大腸がんの肝転移促進
機構の解明に成功したと発表し
たのは、素晴らしい業績です。
大腸がんに限らず、多くのがん
組織ではp53のGOF型変異が検出
され、悪性化が進行したがん細
胞では野生型p53 が欠損してい
て、それぞれの現象が、がんの
悪性化に関係していると考えら
れますが、本研究により、それ
らの相互作用が転移促進の鍵に
なることが初めて明らかになっ
たということですから、将来的
な大腸がん肝転移に対する新規
予防・治療薬の開発戦略に大き
く貢献できるものと期待したい
と思います。
 国立長寿医療研究センターが
5月19日、もの忘れ外来を受診
した患者さんの便検体を収集し、
バイオバンクに保存された臨床
情報を活用して、腸内細菌と認
知機能との関連を解析したのは、
素晴らしい業績です。その結果、
腸内細菌の代謝産物が認知症と
強く関連することを見出したこ
とは、喜ばしいことです。腸は、
人体最大の免疫臓器であること
を考えれば、当然と言えるでし
ょうが、腸内環境の改善を通じ
て、認知症予防ができることを
示唆しているとも考えられます。

 人体の中の靭帯という部分を
痛める          笑














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