診療マル秘裏話  号外Vol.1830 令和2年6月16日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)慢性硬膜下血腫は軽い打撲でも発症し手術必要
2)生体ストレス下でも正確に造血系変化解析可の方法















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 慢性硬膜下血腫は軽い打撲でも発症し手術必要












 認知症になると記憶や理解、
判断する力が衰え、日常生活が
困難になります。高齢化で患者
さんが急増しており、介護問題
も深刻です。しかし、「認知症
と思われた患者が手術で治るこ
とがあります」と近畿大学病院
脳神経外科の加藤天美診療部長
は話しています。その一つが慢
性硬膜下血腫による認知症状で
す。脳は頭蓋内で硬膜、くも膜、
軟膜という三つの膜に包まれ保
護されています。硬膜とくも膜
の間に血液がたまった状態を硬
膜下血腫ということです。通常、
高齢男性に多く見られます。

 慢性硬膜下血腫は、柱に頭を
ぶつけた程度の軽い打撲でも発
生します。酔っていたり、認知
症だったりして、記憶がない可
能性もありますが、頭部打撲が
なく出血する場合もあります。

 硬膜下の出血が血腫として残
り、だんだん体積が増えて脳を
圧迫します。脳の圧迫症状は、
打撲後数週間から2、3カ月後
に出現し、頭痛、物忘れや認知
機能の低下、手足のしびれやま
ひ、ろれつが回らないなどが見
られます。血腫が自然に吸収さ
れることもありますが、血腫を
包む膜はもろく、多くは再出血
を繰り返し慢性化します。放置
して脳の圧迫が限界に達したと
きや、急に再出血したときは、
死に至る場合もあります。

 特に、酔って転倒し頭を打撲
したりする酒好きの人や、加齢
や認知症などで脳が萎縮し頭蓋
骨と脳との隙間が広がった人、
血液を固まりにくくするワルフ
ァリンやアスピリンなどの薬を
服用している人は、慢性硬膜下
血腫を発生しやすいとされてい
ます。重症化するケースも多い
ので注意すべきです。慢性硬膜
下血腫は、頭部コンピューター
断層撮影(CT)検査あるいは
磁気共鳴画像(MRI)検査で
容易に診断できます。治療は、
緊急に血腫を除去して、脳への
圧迫を除く外科治療が基本とな
ります。症状が出たときは脳の
圧迫が既に限界に達しているこ
とが多いためです。

 通常、局所麻酔で頭蓋骨に1.
5 センチ程度の穴を開け、チュ
ーブを血腫内に挿入・留置し、
血腫を排出する「穿頭(せんと
う)血腫除去術」が行われます。
手術後、頭部CT検査で血腫の
縮小が確認されれば、チューブ
を抜きます。入院期間は数日と
されています。「術後の合併症
はほとんどなく、症状は劇的に
改善します」と加藤診療部長は
言っています。

 高齢者では、慢性硬膜下血腫
であるのに認知症と混同されて
しまうケースも多いということ
です。「慢性硬膜下血腫は死に
至ることもある一方で、手術で
治せる病気です。比較的急に(
数週間ほど)認知症のような症
状が出た、あるいは強まったと
きには、治せる認知症として慢
性硬膜下血腫を疑い、脳神経外
科に相談してください」と加藤
診療部長は呼び掛けています。

慢性硬膜下血腫について解説し

ている動画です。

 

 

 

 



 近藤さんが、認知症と混同さ
れた。          笑














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2】 生体ストレス下でも正確に造血系変化解析可の方法










 東京医科歯科大学は5月22日、
感染や炎症などの生体ストレス
下でも正確に造血系の変化を解
析できる方法を開発したと発表
しました。これは、同大・難治
疾患研究所・生体防御学の樗木
俊聡教授らの研究グループによ
るものです。研究成果は、「Bl
ood 」のオンライン速報版に掲
載されています。赤血球や白血
球、血小板などの血液細胞は、
それぞれ酸素の運搬、生体防御、
止血などの働きを介して生命や
恒常性の維持に必須の役割を担
っています。造血系は、血液の
源となる造血幹前駆細胞(Hema
topoietic stem progenitor ce
ll:HSPC)から血液細胞が作ら
れる仕組みであり、骨髄で恒常
的に維持されています。

HSPCから作られる血液細胞の量
や種類は、感染症や炎症性疾患、
放射線や抗がん剤治療など、さ
まざまな生体ストレスにより変
動することが知られています。
また、HSPCによる血液細胞供給
の変動や異常血液細胞の供給は、
多くの疾患の回復や進展にも大
きく影響することから、生体ス
トレス下での造血応答を正しく
解析することで、病態の理解や
新たな治療法の開発につながる
ことが期待されます。

造血系は、血液細胞の供給を介
して全身に影響を与える大きな
仕組みです。そのため、造血系
の研究には実験動物を用いた個
体レベルの研究が必要不可欠で
す。しかし、これら動物モデル
で造血系の解析に使われている
従来の方法は、感染症や炎症な
どの生体ストレス下では正確な
解析ができない致命的な欠陥が
ありました。定常時、大部分の
血液細胞を生み出すポテンシャ
ルをもつHSPCはSca-1 分子(以
下、Sca-1 )を発現しています。
一方、少し分化の進んだ、特定
の血液細胞のみを生み出す前駆
細胞はSca-1 を発現していませ
ん。ところが、ストレス環境下
でインターフェロンが産生され
ると、インターフェロンの刺激
によって後者にもSca-1 が発現
してしまい、両者の区別がつか
なくなってしまいます。そこで
研究グループでは、ストレス存
在下でも両者を区別できる新た
な指標を用いた解析法を開発す
ることにしました。研究グルー
プは今回、Sca-1 に替わる新た
な指標となる分子を探索しまし
た。造血前駆細胞に発現する18
0 個の分子をスクリーニングし
た結果、CD86分子(以下、CD86)
が、定常時、Sca-1 と類似の発
現パターンを示すことが分かり
ました。次に、CD86が感染症や
炎症に伴い、定常時に発現して
いなかった前駆細胞に発現誘導
されるか解析しました。その結
果、Sca-1 とは対照的に、CD86
は生体ストレス環境で産生され
るインターフェロンの影響をほ
とんど受けないことが判明しま
した。さらに、CD86を新たな指
標にして、生体ストレス下で造
血応答を解析した結果、Sca-1
を用いた従来の解析法では低下
するとされていた赤血球産生が
逆に亢進すること、同様に低下
するとされていた造血幹前駆細
胞の機能が正常に維持されてい
ることが証明されました。

今回の研究成果において、研究
グループは、Sca-1 の発現を指
標にした従来法に替わり、生体
ストレス存在下でも厳密に造血
幹前駆細胞を検出し造血応答解
析を可能にする、CD86を用いた
新たな解析法を開発しました。
今後、これまで従来法で解析・
報告されてきた多くの造血研究
成果が、CD86を用いた新たな解
析法で再検討され、結論の信頼
性が確認または見直されること
となります。

研究グループは、「従来法では
見逃されていた造血現象の解析
が可能になることで、生体スト
レスに対する造血応答の理解が
深化し、造血系疾患病態の正確
な把握や治療法への応用が期待
される」と、述べています。

血液の成分について解説してい

る動画です。

 

 

 



 性格を正確に把握する。笑














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編集後記



 「認知症と思われた患者が手
術で治ることがあります」慢性
硬膜下血腫について解説してい
ますが、もう一つ手術で認知症
と思われた患者さんが治ること
を明記しておきたいと思います。
それは、正常圧水頭症という病
気です。正常圧水頭症の場合は、
脊髄と腹腔を結ぶVPシャントと
いう手術をすると劇的に症状が
良くなります。ただし、正常圧
水頭症の場合でも、慢性硬膜下
血腫の場合でも、放置している
期間が長いとたとえ手術をした
としても、症状の劇的改善が認
められないことがあります。で
すから、早期発見、早期治療が
必要となります。正常圧水頭症
の場合は、尿失禁が必発ですの
で、発見は容易なはずですが、
医師が気づかない場合もあり、
啓蒙活動が必要だと思います。
 東京医科歯科大学が5月22日、
感染や炎症などの生体ストレス
下でも正確に造血系の変化を解
析できる方法を開発したと発表
したのは素晴らしい業績です。
さらに、CD86を新たな指標にし
て、生体ストレス下で造血応答
を解析した結果、Sca-1を用いた
従来の解析法では低下するとさ
れていた赤血球産生が逆に亢進
すること、同様に低下するとさ
れていた造血幹前駆細胞の機能
が正常に維持されていることが
証明されたのは、エレガントな
手法と言えるでしょう。従来法
では見逃されていた造血現象の
解析が可能になることで、生体
ストレスに対する造血応答の理
解が深化し、造血系疾患病態の
正確な把握や治療法への応用を
期待したいと思います。造血系
疾患を専門としている私は研究
が進むことで、治療が容易にな
ることを切に祈念するばかりで
す。

 用意することは容易です。笑
















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