診療マル秘裏話  号外Vol.1935 令和2年10月17日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)再発または難治性多発性骨髄腫の薬剤が新発売
2)武漢熱重症化を予測する液性因子を同定と発表














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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 再発または難治性多発性骨髄腫の薬剤が新発売












 サノフィ株式会社は8月31日、
「サークリサ(R)点滴静注100
mg/500mg」(一般名:イサツキ
シマブ(遺伝子組換え)、以下、
サークリサ)について、「再発
または難治性の多発性骨髄腫」
(少なくとも2つの標準的な治
療が無効または治療後に再発し
た患者さんを対象)を効能・効
果として、同日より発売したと
発表しました。同剤の発売に伴
い、同社は9月9日にメディアセ
ミナーを開催しました。「再発・
難治性多発性骨髄腫のアンメッ
トニーズと新たな治療選択肢サ
ークリサによる今後の治療展望」
と題し、日本赤十字社医療セン
ター輸血部長・骨髄腫アミロイ
ドーシスセンター長の鈴木憲史
氏が講演しました。多発性骨髄
腫は、血液ガンでは世界で2番
目(日本では3番目)に多い血
液腫瘍です。日本では65~84歳
で多く診断され、大部分の患者
さんで再発が認められます。多
発性骨髄腫の治療薬は複数あり
ますが、依然として治癒が望め
ず、患者さんの負担がきわめて
大きい悪性疾患です。

 サークリサは、多発性骨髄腫
の腫瘍細胞表面に高頻度かつ一
様に発現しているCD38受容体の
特異的エピトープを標的とする
新規モノクローナル抗体製剤で
す。補体や免疫細胞を介さず直
接的に細胞死(アポトーシス)
を誘導する働き、また、CD38の
酵素活性部位に結合、酵素とし
ての働きを阻害することで最終
的にアデノシンの産生を抑え免
疫応答の抑制を低減させる働き
のほか、補体依存性細胞傷害、
抗体依存性細胞傷害、抗体依存
性細胞貪食、制御性T細胞阻害
作用、NK細胞の活性化といった
7つの作用機序を通じて抗腫瘍
効果を発揮するよう設計されて
います。サークリサをポマリド
ミド・デキサメタゾン併用療法
(Pd療法)に追加した日本を含
む国際共同P3 試験(ICARIA-MM
試験)では、Pd療法にサークリ
サを追加する治療を受けた群(
サークリサ併用療法群,n=154)
で、無増悪生存期間の中央値は
11.53か月であったのに対し、P
d療法単独群(Pd群、n=153)は
6.47か月と、統計学的に有意な
改善が認められました(ハザー
ド比0.596, 95%信頼区間:0.44-
0.81, p=0.0010)。奏効率につ
いても、サークリサ併用療法群
は、Pd群に比べ、有意に高い奏
効率を示しました(60.4% vs.
35.3%, p<0.0001)。

 また、追加解析の結果、実臨
床を反映する患者さんの集団で
ある高リスク染色体異常を有す
る患者さん、75歳以上の患者さ
ん、腎機能障害患者さん、レナ
リドミド抵抗例の患者さんなど
のサブグループにおいても、サ
ークリサ併用療法群でPd群を上
回る治療上の有益性が認められ
ました。安全性について、サー
クリサ併用療法群において発現
率の高かった副作用(グレード
にかかわらず患者さんの20%以
上にみられた有害事象)は、好
中球減少症(96%)、インフュ
ージョンリアクション(39%)、
肺炎(31%)、上気道感染(58
%)、下痢(26%)でした。サ
ークリサ併用療法群の5%以上に
現れた重篤な副作用は、肺炎(
25.3%)と発熱性好中球減少症
(12.3%)でした。また、サー
クリサ併用療法群の日本人集団
における重篤な有害事象は4例
(44.4%)あり、その内訳は、
肺炎が2例、骨髄異形成症候群、
脱水、腫瘍崩壊症候群、頭蓋内
動脈瘤、心房細動、慢性閉塞性
肺疾患および全身健康状態低下
が各1例でした。鈴木氏はサー
クリサの特徴について、「プロ
テアソーム阻害剤と免疫調節薬
レナリドミド治療後の選択肢の
1つとなることが期待される。
加えて、これまでの抗CD38抗体
薬と比べて、治療奏効まで1.2
か月と短期間であり、点滴静注
時間もインフュージョンリアク
ションがない体重50kgの人であ
れば、初回2時間14分、2回目以
降は2時間00分と短く済む」と
コメントしました。続けて「こ
れまで多発性骨髄腫の治癒は難
しいとされてきたが、治癒を目
指せる時代となったのではない
か。新たな治療選択肢が1つ増
えたことは、患者の治療への不
安軽減にもつながる」と、期待
を述べました。

骨髄腫についての講義動画です。

 

 

 

 



 装甲車出動で作戦が奏功した。
















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2】 武漢熱重症化を予測する液性因子を同定と発表













 国立国際医療研究センター(
NCGM)は9月24日、武漢熱患者
さんの血液を経時的に収集し、
病態の経過に沿った形で血中の
液性因子の網羅的解析を行った
結果、重症化を予測する液性因
子を同定したと発表しました。
この研究は、NCGMゲノム医科学
プロジェクトの杉山真也副プロ
ジェクト長、センター病院国際
感染症センターの木下典子医師、
国際感染症センターの大曲貴夫
センター長、研究所ゲノム医科
学プロジェクトの溝上雅史プロ
ジェクト長の研究グループによ
るものです。研究成果は、「Ge
ne」オンライン版に掲載準備中
(in press)です。2019年末よ
り武漢熱ウイルスの感染が世界
的に拡大し、2020年8月末現在、
国内の感染は一旦落ち着きつつ
ある一方で、世界的には継続的
に新規感染者が毎日20万人を超
え、死亡者が5,000 人前後発生
しています。これまでのところ、
武漢熱患者さんの約8割が軽症
のまま回復し、残りの約2割が
重症もしくは重篤化することが
分かっています。特に、重症・
重篤化する患者さんでは、感染
初期は、軽症と見られる症状で、
そこから急激な悪化が見られ、
酸素吸入や人工呼吸器(もしく
はECMO)が必要な状態へ移行す
るという特徴な臨床経過があり
ます。現在のところ、この重症・
重篤化する患者さんを予測する
有効な手段がなく、患者さん全
員を隔離もしくは入院させるな
どして、症状の経過を観察する
必要があります。そのため、患
者さんが爆発的に増加するステ
ージおいては医療資源が圧迫さ
れる原因となり、医療崩壊が危
惧される状態になり得ます。

 武漢熱患者さんの重症・重篤
化を事前に予測できる診断マー
カーがあれば、比較的割合の少
ない重症・重篤予備群に注力し
た経過観察が可能となり、限ら
れた医療資源の有効活用が可能
となると言えます。また、診断
の迅速性を考えると、血液等を
使った臨床検査で短時間での結
果判定が望ましいと思われます。
そこで研究グループは、武漢熱
患者さんから得られた経時的な
採血検体(血清)を用いて、予
後予測が可能となる分子マーカ
ーの探索を進めました。軽症化
と重症・重篤化の事前の予測が
可能となれば、医療資源の適切
な分配が可能となり、集中的な
治療を必要とする患者さんに最
大限に注力することができ、救
命することにつながると考えら
れます。

 まず、武漢熱患者さん28人の
血清を使い、液性因子の網羅的
解析を実施しました。各患者さ
んで3ポイント以上の採血があ
る人を選び、病態の経過に沿っ
た液性因子の変化を追跡しまし
た。その結果、軽症回復患者さ
んと重症化患者さんを分けるこ
とが可能な因子として、CCL17、
IFN-λ3、CXCL9、IP-10、IL-6
を同定しました。これらの因子
は、その病態の経過に合わせた
特徴から2つに分けられること
が判明しました。

 CCL17 は、武漢熱感染初期か
ら軽症患者さんと将来の重症患
者さんの間で、血液中の濃度に
差が認められました。具体的に
は、将来の重症患者さんでは感
染初期の軽症時から基準値より
も低い値を示し、そのまま重症
化まで低い値が続きました。一
方で、軽症患者さんは健常人と
ほぼ同じ値を取ることが分かり
ました。残りの4因子は、感染
初期では軽症患者さんと将来の
重症患者さんに違いはないもの
の、重症化した患者さんでは、
その重症化が認められる数日前
に急激に血液中の値が上昇する
ことが明らかになりました。

 続いて、これらの5因子が武
漢熱重症化に特異的なものなの
か、他の疾患群から得られた血
液で確認しました。使用した疾
患群は、C型慢性肝炎、児童精
神疾患、2型糖尿病、慢性腎不
全、慢性心不全、間質性肺炎、
関節リウマチです。その結果、
CCL17 が低い値を取るのは、武
漢熱重症化のみでした。IFN-λ
3 は、C型慢性肝炎で一部高い
値を示しましたが、武漢熱重症
化患者さんで統計的に有意に高
い値を示しました。CXCL9とIP-
10は、武漢熱重症患者さんで特
徴的に高い値を示しました。IL
-6は関節リウマチで高い値を示
すことがありましたが、武漢熱
重症患者さんで統計的に有意に
高い値を示しました。これらの
ことから、上記5因子は武漢熱
重症化患者さんを早期に発見し、
囲い込むことに有用である可能
性が示されました。

 今回の結果は、5因子を適切
なタイミングで測定することで、
武漢熱重症化患者さんを早期に
発見し、治療することが可能と
なり得ることを示すものです。
今後、実臨床での有用性が示さ
れれば、軽症患者さんと重症患
者さんを適切に入院やホテル待
機の可否を判断でき、医療資源
の適切な配分ができるようにな
ると考えられます。「今後は、
国内で多施設共同での前向き試
験の準備を進めている。賛同を
得られた共同研究施設と協力し
て、今回の5因子の実臨床での
真の有効性について検証を行う」
と、研究グループは述べていま
す。

尿検査で重症化を予測できる

可能性についてのニュース

動画です。

 

 

 

 



 強力な協力者が現れる。笑












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編集後記




 サノフィ株式会社が8月31日、
「サークリサ(R)点滴静注100
mg/500mg」(一般名:イサツキ
シマブ(遺伝子組換え)、以下、
サークリサ)について、「再発
または難治性の多発性骨髄腫」
(少なくとも2つの標準的な治
療が無効または治療後に再発し
た患者さんを対象)を効能・効
果として、同日より発売したと
発表したのは、喜ばしいことで
す。残念なのは、標準的な治療
が無効または、治療後に再発し
た患者さんが対象ということで
す。標準治療と比較して、それ
程効果があるなら、ファースト
チョイスに持っていくべきだと
思います。新薬なので、慎重に
という気持ちは、分かりますが
患者さんの身体の負担が小さい
というメリットを最大限生かす
ようにして頂きたいものです。
 国立国際医療研究センター(
NCGM)が9月24日、武漢熱患者
さんの血液を経時的に収集し、
病態の経過に沿った形で血中の
液性因子の網羅的解析を行った
結果、重症化を予測する液性因
子を同定したと発表したのは、
素晴らしい業績です。今回の結
果は、5因子を適切なタイミン
グで測定することで、武漢熱重
症化患者さんを早期に発見し、
治療することが可能となり得る
ことを示すということですから、
トリアージがうまく行って欲し
いものです。今後、実臨床での
有用性が示されれば、軽症患者
さんと重症患者さんを適切に入
院やホテル待機の可否を判断で
き、医療資源の適切な配分がで
きるようになるでしょうから、
臨床試験などで、有用性を示す
べく頑張って頂きたいものです。

 果皮を使うか否かの可否を示
して頂きたい。      笑















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