診療マル秘裏話  号外Vol.1967 令和2年11月23日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)日本人女性乳ガン患者では,遺伝性乳ガンが約5%
2)ミューズ細胞を神経難病ALSに治療応用する可能性













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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 日本人女性乳ガン患者では,遺伝性乳ガンが約5%












 乳ガンには生殖細胞変異が原
因となって発症するものがあり
ますが、その遺伝学的背景はよ
く分かっていません。京都大学
大学院乳腺外科教授の戸井雅和
氏らは、乳ガン患者さん1,995
例の血液細胞から抽出したDNA
を用いて、遺伝性乳ガンの原因
として知られる11遺伝子を対象
にゲノム解析を行い、日本人女
性の乳ガン患者さんでは遺伝性
乳ガンが約5%を占めることを
明らかにしました。

 乳ガンは女性が最も罹患しや
すいガンであり、その一部は生
殖細胞変異により発症する遺伝
性にものであることが知られて
います。乳ガン全体に占める遺
伝性乳ガンの割合は、5.7 (わ
が国のデータ)~10%(欧米の
データ)とする報告があります
が、日本人を対象とした研究は
少なく不明点が多いとされてい
ます。

 戸井氏らは今回、京都大学病
院乳腺外科と17の関連施設が参
加するバイオバンクに登録され、
適格基準を満たした乳ガン患者
さん1,995 例の血液細胞から採
取したDNA を用いて、遺伝性乳
ガンの原因と成りうる11遺伝子
についてゲノム解析を行いまし
た。

 解析の結果、生殖細胞系列に
おける病的遺伝子変異は、日本
人女性を対象とした既報と同等
の5.1%(101例)で認められま
した。変異が同定された遺伝子
は、BRCA2が62例、BRCA1が15例
と多く、合計で77例(3.9%)で
した。病的遺伝子変異を有する
症例では発症年齢が低く(乳ガ
ン発症年齢中央値:病的遺伝子
変異のある群53歳、ない群60歳)、
BRCA1に遺伝子異常がある症例
ではトリプルネガティブ乳ガン
が多いという結果がでました。

 また、BRCA1/2変異陽性乳ガ
ン30例についてゲノム解析を行
った所、77%で染色体コピー数
異常による両アレルの不活化が
認められましたが、残りの23%
では片アレルのみが不活化して
いました。これらを比較すると、
両アレルの不活化が見られる症
例では、ヘテロ接合性消失(LO
H )がより広範囲に認められ、
BRCA1変異例ではTP53変異、BRC
A2変異例ではRB1 遺伝子変異が
高頻度に認められました。

 TP53遺伝子、RB1 遺伝子はそ
れぞれBRCA1、BRCA2と同じ17番、
13番染色体上に位置しており、
染色体異常によりこれらの遺伝
子が同時に欠失することが腫瘍
化に関わると考えられるという
ことです。臨床的特徴の比較で
は、両アレルが不活化した症例
では発症年齢が低く、進行ガン
やトリプルネガティブ乳ガンが
多い傾向にありました。

 通常、乳ガン患者さんにおけ
る生殖細胞系列の遺伝子検査は、
National Comprehensive Cance
r Network(NCCN) 基準により
行われますが、今回の検討では
生殖細胞変異を有していた症例
のおよそ25%はNCCN基準に当て
はまらなかったことから、同基
準に当てはまらない症例の拾い
上げが今後の課題であり、日本
人データの蓄積によって日本人
に適用できる予測モデルの構築
が期待されます。また、BRCA1/
2 変異陽性乳ガンの一部の患者
さんに対してはPARP阻害薬やプ
ラチナ製剤が有効であると報告
されていますが、今後さらなる
解析により両アレル、片アレル
の不活化とこれらの薬剤による
治療効果との関連についての解
明が必要であるとしています。

 PARP阻害薬とはPARP(ポリア
デノシン5'二リン酸リボースポ
リメラーゼ)というDNA 修復や
細胞死などに関与している酵素
があります。本剤はPARPを阻害
することでDNA 修復を妨げ、ガ
ン細胞の細胞死を誘導すること
で抗腫瘍効果をあらわすとされ
ています。

遺伝性乳ガン・卵巣ガンについ

て解説している動画です。

 

 

 


   
 主要な腫瘍をターゲットとす
る薬剤。         笑













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2】 ミューズ細胞を神経難病ALSに治療応用する可能性












 岡山大学と東北大学の共同研
究チームは、多能性幹細胞の「
Muse細胞」(ミューズ細胞)
を神経難病の筋萎縮性側索硬化
症(ALS)に治療応用する可
能性を突き止めました。マウス
実験で運動機能などの改善効果
を確認できました。共同研究に
はミューズ細胞の事業化を担う
三菱ケミカルホールディングス
傘下の生命科学インスティテュ
ート(東京都千代田区)も参加
しました。今後、治験に進めて
実用化を目指します。

 ALSは、運動神経が変性し
たり減少することで舌や四肢の
筋力が低下し、やがて呼吸筋麻
痺を起こします。原因は不明で
中年期以降の発症が多いとされ
ています。複数の治療薬があり、
人工呼吸器などで治療を行うも
ののが根治できません。発症後
3~5年で死亡するとされる難
病です。

 ミューズ細胞は骨髄や血液な
どに含まれる幹細胞です。傷害
部位に集積し、傷害を受けてい
る細胞に自発的に分化し修復す
る機能があります。ガン化しな
い特徴もあります。東北大の出
澤真理教授が発見しました。S
SEAー3と呼ぶ分子を目印に
単離でき、ドナー由来ミューズ
細胞を静脈に点滴投与し、再生
医療に用いる治験が脳梗塞など
で進んでいます。

 共同研究チームはALSのモ
デルマウスを対象に静脈投与で
効果を確かめました。効果を発
揮するには細胞が脊髄に到達す
るかが課題で、比較対照とした
骨髄間葉系幹細胞(MSC)は
脊髄に届かない一方、ミューズ
細胞は脊髄に遊走・生着するこ
とを画像で確認しました。

 次に、ミューズ細胞を1週間
に1回、10週間にわたって投与
した所、MSC投与に比べて複
数の運動機能評価テストで改善
が認められました。骨随に到達
したミューズ細胞が神経細胞に
栄養を補給するグリア細胞のア
ストロサイトに分化しているこ
とも分かりました。

 これら結果を踏まえ生命科学
インスティテュートは治験に進
む計画です。2~3年後に実用
化のめどを得たい考えというこ
とです。ミューズ細胞の治験は
心筋梗塞、脳梗塞、脊髄損傷、
表皮水疱症、新生児低酸素虚血
脳症に続く6テーマ目です。

このニュースのニュース動画で

す。

 

 

 

 



 比較対照の対象となる。笑














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編集後記




 京都大学大学院乳腺外科教授
の戸井雅和氏らは、乳ガン患者
さん1,995 例の血液細胞から抽
出したDNA を用いて、遺伝性乳
ガンの原因として知られる11遺
伝子を対象にゲノム解析を行い、
日本人女性の乳ガン患者さんで
は遺伝性乳ガンが約5%を占め
ることを明らかにしたのは偉大
な業績です。5%の遺伝性乳ガ
ンの患者さんは、発症以前に、
見つかる可能性も大きいと思い
ます。そうすれば、早期発見、
早期治療に結び付けられるため、
患者さんおよび血縁の女性の方
にとっては、大きな福音となる
ことでしょう。この研究結果が
臨床に応用される日がくること
を心待ちにしたいと思います。
 岡山大学と東北大学の共同研
究チームが、多能性幹細胞の「
Muse細胞」(ミューズ細胞)
を神経難病の筋萎縮性側索硬化
症(ALS)に治療応用する可
能性を突き止めたのは素晴らし
い業績です。 比較対照とした
骨髄間葉系幹細胞(MSC)は
脊髄に届かない一方、ミューズ
細胞は脊髄に遊走・生着するこ
とを画像で確認しているとのこ
とですから、非常に有望な治療
だと考えます。また、ミューズ
細胞を1週間に1回、10週間に
わたって投与した所、MSC投
与に比べて複数の運動機能評価
テストで改善が認められ、神経
細胞に栄養を補給するグリア細
胞のアストロサイトに分化して
いることも分かったというのは、
凄い結果だと思いました。

 非常事態に非情な判断を下す。















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