診療マル秘裏話  号外Vol.2279 令和3年11月22日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)膵ガン早期診断のためのCT画像異常所見を検討
2)バクテロイデスが分岐鎖アミノ酸代謝を亢進で肥満抑制














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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 膵ガン早期診断のためのCT画像異常所見を検討

















 ガンの中でも致死率が高い膵
管ガン(PDAC)。早期発見・早
期治療例では予後が比較的良好
ですが、早期診断には課題があ
ります。金沢大学大学院放射線
科学の戸島史仁氏らは、PDAC早
期診断のためのCT画像異常所見
について検討し、その結果と所
見への勧奨について第52回日本
膵臓学会(9月22~23日、ウェ
ブ併催)で発表しました。

 戸島氏が所属する金沢大学病
院でのPDAC発見契機は、症状が
43%と最も多く、次いで画像所
見が30%。画像所見で発見され
たPDACは、比較的切除可能で進
行度も低いことが分かっていま
す。同院では、画像所見を契機
とするPDAC発見の増加がPDACの
早期発見や予後の改善につなが
ると考え、別の目的で撮像され
たPDAC非リスク患者さんのCT画
像読影にも積極的に取り組んで
います。

 早期PDACの画像所見としては、
主膵管変化(狭窄/上流側拡張
を含む)、限局性萎縮、限局性
造影効果などを拾い上げます。
しかしあくまでも間接所見であ
り、浸潤ガンが発生する頻度(
感度、特異度)や時間間隔は明
らかになっておらず、積極的な
検査・治療介入や経過観察につ
いての勧奨する基準も定まって
いません。

 そこで同氏らは画像所見によ
るPDAC早期発見を目的に、過去
の病期1のPDAC診断前CT画像を
検討しました。少なくとも1年
以上前の膵ガン診断前CT画像を
有する病期1のPDAC症例103 例
を対象としました。膵臓の限局
的な異常所見を検討するため、
過去10年以上PDACがなく経過し、
PDAC群と年齢、性、造影剤使用
の有無でマッチングした10年以
上前のCT画像を有する103 例を
対照群としました。

 戸島氏らはまず、両群の診断
前CT検査における異常所見の頻
度を比較検討しました。異常所
見はPDAC群53.4%(55例)、対
照群20.4%(21例)で認められ
ました(P<0.001)。PDAC群に
おける異常所見の内訳は限局性
萎縮37.9%(39例)、主膵管変
化13.6%(14例)、限局性造影
効果26.2%(17例)であり、い
ずれも対照群より高頻度でした
(P<0.05)。

 特異度は主膵管変化97.1%、
限局性萎縮92.2%、限局性造影
効果90.8%で主膵管変化で高い
という結果がでました。同氏は
「臨床では非膵ガン患者の方が
圧倒的に多いことを考慮すると、
90%程度の特異度では陽性適中
率が低くなり過ぎるため、限局
性萎縮や限局性造影効果だけで
は侵襲的な検査や治療介入を推
奨しにくい」と考察し、2つの
所見が同時に認められる頻度を
両群で検討しました。PDAC群16
.9%(11例)、対照群3.1%(2
例)となり(P<0.05),特異度
は96.9%でした。造影CTに限っ
て評価しても、傾向は同等でし
た(PDAC群60.6%、対照群21.5
%、P<0.001)。

 また異常所見の頻度はPDAC診
断までの期間が長いほど減少(
PDAC診断まで1年以上2年未満64
.9%、3年以上5年未満41.8%、
7年以上10年未満18.5%、10年
以上0.0%)。主膵管変化が認め
られたのはPDAC診断まで1年以
上2年未満がほとんど(13.6%、
13例)で、5年以上前のCT画像
では認められませんでした。一
方、限局性萎縮と限局性造影効
果は5年以上前のCT画像でも確
認されました。以上の結果から、
戸島氏はCT画像の異常所見から
膵ガン早期発見につながる取り
組みとして以下を挙げました。

 主膵管変化:ルーチンのCTで
視認できる明らかな主膵管狭窄
はPDACの特異度が高く(97.1%)
PDAC診断までの期間が短い(平
均1.1年)ため、積極的な検査・
治療介入を勧奨します。

 限局性萎縮、限局性遅延造影:
PDACの特異度が高くなく(92.2
%、90.8%)PDAC診断までの期間
が長い(平均4.6年、3.3年)た
め、程度によってMRI やCT画像
で主膵管評価を検討しました。
一方、経過観察で進行や複数の
異常所見がある場合は積極的な
検査・治療介入を勧奨します。
 同氏は「画像所見によるPDAC
発見は膵ガンの早期診断におい
て重要な要素。画像診断医が担
う役割は大きい」と締めくくり
ました。

膵臓ガンの初期症状について

解説している動画です。

 

 

 



 画像の傾向を集積して、蛍光
ペンでなぞった文章を作成して
携行した。        笑















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2】 バクテロイデスが分岐鎖アミノ酸代謝を亢進で肥満抑制















 神戸大学は10月28日、腸内細
菌Bacteroides が褐色脂肪組織
の分岐鎖アミノ酸代謝を亢進す
ることで肥満を抑制することを
発見したと発表しました。この
研究は、同大大学院医学研究科
内科学講座循環器内科学分野の
吉田尚史研究員、山下智也准教
授、平田健一教授らの研究グル
ープによるものです。研究成果
は、「iScience」に掲載されて
います。

 肥満者数は世界で増加傾向に
あり、日本においても肥満に起
因する多くの疾患が増加してお
り、医療経済的観点からも社会
問題となっています。

 褐色脂肪組織は分岐鎖アミノ
酸を含む栄養素を利用して熱産
生する臓器であり、熱産生によ
るエネルギー消費の増大から肥
満抑制的に働くことが知られて
います。これまでに、褐色脂肪
組織における分岐鎖アミノ酸利
用の低下(=分岐鎖アミノ酸代
謝の低下)が熱産生を低下させ
ることで肥満を引き起こすこと
は報告されていますが、褐色脂
肪組織における分岐鎖アミノ酸
代謝を制御する環境因子につい
ては解明されていません。

 今回、研究グループは、腸内
細菌が褐色脂肪組織における分
岐鎖アミノ酸代謝を制御してお
り、Bacteroides が同代謝を亢
進させることで肥満を抑制する
ことを明らかにしました。

 まず、腸内細菌が褐色脂肪組
織の分岐鎖アミノ酸代謝を制御
していることを明らかにするた
め、腸内細菌が存在する通常マ
ウスと、腸内細菌が存在しない
無菌マウスに高脂肪食による負
荷を与え、褐色脂肪組織におけ
る分岐鎖アミノ酸代謝を評価し
ました。その結果、通常マウス
では高脂肪食負荷後に緩やかに
分岐鎖アミノ酸代謝が低下する
のに比べ、無菌マウスでは高脂
肪食負荷後、分岐鎖アミノ酸代
謝が顕著に低下していました。
このことから、腸内細菌は高脂
肪食に伴う褐色脂肪組織の分岐
鎖アミノ酸代謝の低下に対して、
保護的に作用していることが明
らかになりました。

 次に、Bacteroides2菌(Bact
eroides doreiとBacteroides v
ulgatus) を食餌性肥満モデル
マウスに経口投与し、その抗肥
満効果や褐色脂肪組織の分岐鎖
アミノ酸代謝に与える影響を評
価しました。結果、Bacteroide
s2菌を投与したマウスはコント
ロールマウスより体重増加が有
意に抑制されました。また、菌
投与マウスにおいて褐色脂肪組
織の分岐鎖アミノ酸代謝は有意
に亢進していました。このこと
は、Bacteroides2菌が褐色脂肪
組織の分岐鎖アミノ酸代謝を亢
進させることで肥満を抑制した
ことを示唆しているということ
です。

 最後に、肥満患者7人の糞便
を採取後、神戸大学ヒト腸管モ
デルにて培養し、Bacteroides2
菌のプロバイオティクスを添加
しました。その結果、7人全例
において、Bacteroides2菌の割
合が有意に増加することを明ら
かにしました。このことは、肥
満患者さんがBacteroides2菌の
プロバイオティクスを摂取した
際に、腸内細菌中に占めるBact
eroides2菌の割合が増加するこ
とを示唆しているということで
す。

 「今回の研究成果は、腸内細
菌と遠隔臓器である褐色脂肪組
織との連関を紐解いたものであ
ると同時に、ヒトにおいて、プ
ロバイオティクス投与によるBa
cteroides2菌の増加により、褐
色脂肪組織の分岐鎖アミノ酸代
謝を介した肥満予防・肥満治療
ができる可能性を示唆しており、
腸内細菌制御による新たな抗肥
満治療の開発が期待される」と
研究グループは述べています。

デブ菌とヤセ菌について解説し

ている動画です。

 

 

 

 



 町内の人の腸内細菌を調査す
る。           笑














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編集後記


 膵ガン早期診断のためのCT画
像異常所見について検討し、そ
の結果と所見への勧奨について
第52回日本膵臓学会(9月22~
23日、ウェブ併催)で発表した
のは素晴らしい業績です。この
場合、画像診断の所見がすぐに
臨床応用されることで、膵ガン
の早期発見に直接的につながる
ことが分かっているので、学会
で発表されただけで、価値ある
業績と言えると思い読者の皆さ
んにメルマガで紹介しました。
例えば、新規内服薬の治療の場
合は、臨床試験を得なければ、
すぐに臨床で使えるということ
には、なりません。余程、論文
となっているエビデンスのある
新薬のものでないと学会発表だ
けでは、評価困難と言えるでし
ょう。その点、このような画像
診断の方法は、すぐに臨床応用
できる点で全く評価が違うと言
う点をご理解下さい。
 神戸大学が10月28日、腸内細
菌Bacteroides が褐色脂肪組織
の分岐鎖アミノ酸代謝を亢進す
ることで肥満を抑制することを
発見したと発表したのは、素晴
らしい業績です。バクテロイデ
スは、ヤセ菌としてしられてお
り、逆にデブ菌としては、ファ
ーミキューテスが知られていま
す。そこで、肥満患者7人の糞
便を採取した実験では、ファー
ミキュイテス菌をはじめとする
デブ菌が多く繁殖していたもの
と推測されます。そこにヤセ菌
としてのバクテロイデス2菌の
プロバイオティクスを添加して
7人全例において、バクテロイ
デス2菌の割合が有意に増加す
ることが証明されたので、デブ
菌が駆逐され、ヤセ菌の天下に
なったものと推測されます。こ
れら、デブ菌とヤセ菌は日和見
菌と言って、勢力の強い方にな
びく性質があることが分かって
います。この場合、勢力が強い
のは、善玉菌ということになり
ます。

 正室の性質を伺う側室。 笑














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