診療マル秘裏話  号外Vol.2505 令和4年8月13日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次

1)内向型舌ガンの細胞遊走能細胞増殖能促進因子
2)安価ベバシズマブ~高価アフリベルセプト のステップ療法












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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 内向型舌ガンの細胞遊走能細胞増殖能促進因子













 東京医科歯科大学は7月21日、
高転移能かつ治療抵抗性を示す
内向型舌ガンにおいてIGFBP-3
が、ガン細胞の細胞遊走能や細
胞増殖能を促進する働きがある
ことを明らかにしたと発表しま
した。この研究は、同大大学院
医歯学総合研究科歯科放射線診
断・治療学分野のEsther Feng
Ying Ng 大学院生、戒田篤志助
教、三浦雅彦教授らの研究グル
ープによるものです。研究成果
は「Scientific Reports」誌に
オンライン掲載されています。

 口腔ガンで最も発生頻度の高
い舌ガンは、肉眼的所見から表
在型、外向型、内向型の3種類
に分類することができます。こ
のうち内向型舌ガンは、他のタ
イプに比べて、転移しやすく、
放射線治療や従来の化学療法に
抵抗性を示すため、内向型舌ガ
ンに対する新たな治療法の開発
に向け、その標的因子の探索が
急務とされていました。先行研
究において、研究グループは内
向型舌ガンに特異的に発現して
いる遺伝子の探索を進め、その
中でヒト舌ガン検体を用いたIG
FBP-3 が、他のタイプと比較し
て、内向型舌ガンにおいて有意
に高発現していることを発見し
ました。しかし、内向型舌ガン
におけるIGFBP-3 の役割は不明
なままでした。

 今回の研究ではまず、内向型
舌ガンにおいてIGFBP-3 がどの
ような機能に関与しているかを
明らかにするため、内向型舌ガ
ン由来細胞のIGFBP-3 発現をsi
RNA により抑制し、その際に変
動する遺伝子をRNA シークエン
シングにより網羅的に解析しま
した。その結果、IGFBP-3 が細
胞遊走や細胞増殖に関連する遺
伝子群の発現制御に関与してい
ることが明らかになりました。
実際、内向型舌ガン由来細胞に
おいてIGFBP-3 発現を抑制する
と、細胞遊走能が低下し、また、
細胞周期におけるG1期の延長に
よる細胞増殖抑制が生じること
を見出しました。細胞周期可視
化システムであるFucci を応用
することで細胞周期相と細胞遊
走能の関連性を調べましたが、
IGFBP-3 により制御される細胞
遊走能は細胞周期相によって違
いはないことが分かりました。

 また、IGFBP-3 は細胞内だけ
でなく、細胞外にも分泌され、
細胞外から細胞に作用すること
も知られています。細胞遊走能
への細胞外IGFBP-3 の関与を調
べるため、遊走能が低下したIG
FBP-3 抑制細胞にヒトIGFBP-3
組換え蛋白質を添加した所、細
胞遊走能は回復せず、内向型舌
ガンにおいては細胞内のIGFBP-
3 が細胞遊走を主に制御してい
る可能性が示唆されました。ま
た、IGFBP-3 抑制細胞では、ER
K 活性が低下している点から、
ERK 経路がIGFBP-3 により制御
される細胞遊走に関連している
ことが示されました。

 内向型舌ガンは治療抵抗性を
示すことから、より効果的な新
規治療法の開発が望まれますが、
その治療標的はまだ見つかって
いませんでした。今回研究グル
ープは、IGFBP-3 が高発現して
いる内向型舌ガンにおいて細胞
内のIGFBP-3 が細胞遊走能およ
び細胞増殖を促進することを明
らかにしました。IGFBP-3 が、
特に悪性度の高い内向型舌ガン
の進展や転移を食い止める有望
な標的因子として新たな治療法
へ応用されることが期待されま
す。「IGFBP-3 の発現が低い舌
ガン細胞株では、細胞遊走や増
殖に対するIGFBP-3 の関与は少
ないことも見出しており、各細
胞におけるIGFBP-3 への依存性
の違いがどのようなメカニズム
に起因するかは今後解決すべき
課題となる」と、研究グループ
は述べています。

 舌ガンについて解説している

動画です。

 

 

 

 



 新型機体に期待する。  笑















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2】 安価ベバシズマブ~高価アフリベルセプト のステップ療法















 米・Austin Research Center
for RetinaのChirag D. Jhaver
i氏らは,中心窩に及ぶ糖尿病黄
斑浮腫(DME) の患者さんを対
象に、安価な抗血管内皮増殖因
子(VEGF)薬ベバシズマブの適
応外使用から開始し、効果不十
分の場合に同類薬のアフリベル
セプトに切り替えるステップ療
法の有効性をランダム化比較試
験で検討しました。その結果、
2年間の治療による視力の改善
効果に関して、最初からアフリ
ベルセプトを使用した単独療法
群と有意差はなかったとN Engl
J Med (2022年7月14日オンラ
イン版)に発表しました。現在
のDME に対する標準治療法は抗
VEGF薬の硝子体内注射ですが、
その費用の高さからステップ療
法を要求する保険会社が増えて
いるということです。

 同試験では、米国の54施設で
visual-acuity letter score(
範囲0~100文字、高スコアほど
視力良好)による視力が24~69
文字(スネレン視力表20/320~
20/50相当)の成人DME患者さん
270例(年齢中央値61歳、女性4
8%)、312眼を登録しました。
最初からアフリベルセプト2.0m
g を使用するアフリベルセプト
単独群(158眼)と,ベバシズマ
ブ1.25mgから開始しアフリベル
セプト2.0mg に切り替えるベバ
シズマブ開始群(154例) にラ
ンダムに割り付けて1カ月間隔
で硝子体内注射を行いました。

 ベバシズマブ開始群では、12
週以降にプロトコルで指定され
た改善を達成できなかった場合
にアフリベルセプトへ切り替え
ることとし、治療開始後2年間
で70%が切り替えました。主要
評価項目とした治療開始後2年
間の視力の平均変化量は、アフ
リベルセプト単独群が15.0±8.
5文字、ベバシズマブ開始群が1
4.0±8.8文字で有意差はありま
せんでした (調整後群間差0.8
文字、95%CI -0.9~2.5文字、
P=0.37)。 副次評価項目につ
いても両群で差はありませんで
した。

 治療開始後2年時点で10文字
以上の視力改善を達成した割合
は各群77% (調整後群間差-3
%ポイント、95%CI -13~8%
ポイント),視力20/20以上の達
成率は,各群22%(同-1%ポイ
ント,-11~8%ポイント)でし
た。治療開始後2年間の中心窩
網膜厚の平均変化量は、アフリ
ベルセプト単独群が-192±143
μm、ベバシズマブ開始群が-1
98±160μmでした(調整後群間
差-16μm、95%CI -39~7μm)。

 一方、アフリベルセプト単独
群ではベバシズマブ開始群に比
べ、重篤な有害事象(52% vs.
36%、P=0.05)および入院(4
8% vs. 32%、P=0.02) が有
意に多いという結果がでました。
以上を踏まえ,Jhaveri氏らは「
中等度の視力低下を呈する成人
DME 患者さんにおいて、アフリ
ベルセプト単独療法とベバシズ
マブから開始するステップ療法
の間で2年間の治療による視力
の改善効果に有意差はなかった」
と結論しました。「硝子体内注
射1回当たりの費用(メディケ
ア償還額)は、ベバシズマブの
70ドルに対しアフリベルセプト
では約26倍の1,830 ドルに上る
ことから、ステップ療法により
大幅な医療費削減が可能になる」
と付言しています。

 抗VEGF薬の眼内投与の動画で

す。

 

 

 



 普賢岳の火砕流について付言
した。          笑













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編集後記



 東京医科歯科大学が7月21日、
高転移能かつ治療抵抗性を示す
内向型舌ガンにおいてIGFBP-3
が、ガン細胞の細胞遊走能や細
胞増殖能を促進する働きがある
ことを明らかにしたと発表した
のは素晴らしい業績です。高転
移能かつ治療抵抗性を示す内向
型舌ガンの治療は非常に困難と
言えると思います。IGFBP-3 が、
特に悪性度の高い内向型舌ガン
の進展や転移を食い止める有望
な標的因子として新たな治療法
へ応用されることが期待される
ということなので、臨床での実
用化は先になるかも知れません
が患者さんにとっては大きな福
音となると思います。
 米・Austin Research Center
for RetinaのChirag D. Jhaver
i氏らが,中心窩に及ぶ糖尿病黄
斑浮腫(DME) の患者さんを対
象に、安価な抗血管内皮増殖因
子(VEGF)薬ベバシズマブの適
応外使用から開始し、効果不十
分の場合に同類薬のアフリベル
セプトに切り替えるステップ療
法の有効性をランダム化比較試
験で検討し、その結果、2年間
の治療による視力の改善効果に
関して、最初からアフリベルセ
プトを使用した単独療法群と有
意差はなかったとN Engl J Med
(2022年7月14日オンライン版)
に発表したのは、素晴らしい業
績です。医療費が高額となる場
合が多い米国では患者さんのお
財布に優しい治療ができるので
はないかと推測しています。

 死力を尽くして、視力を守る。















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