診療マル秘裏話  Vol.862 令和2年6月17日作成

作者 医療法人社団 永徳会 藤田 亨




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目次
 
1)EGFR遺伝子変異ありの肺がん新規治療法を開発
2)障害腸の再生の中心的な役割を担う細胞を特定















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 医療界のトピックスを紹介するこのメールマガジンは
1週間に1回の割合で発行しています。もっと回数を増や
して欲しいという要望もあるのですが、私の能力のなさ
から1週間に1回が限度となっています。これからも当た
り前の医療をしながら、なおかつ貪欲に、新しい知識を
吸収し読者の皆様に提供してゆきたいと思っております。
不撓不屈の精神で取り組む所存ですのでどうかお許し下
さい。

 









 
1】 EGFR遺伝子変異ありの肺がん新規治療法を開発












 京都府立医科大学は5月21日、
EGFR遺伝子変異を有する肺がん
の新規治療法を開発したと発表
しました。この研究は、同大大
学院医学研究科呼吸器内科学病
院准教授の山田忠明氏、教授の
髙山浩一氏らの研究グループに
よるものです。研究成果は、科
学雑誌「Clinical Cancer Rese
arch」掲載されています。

現在、日本国内の肺がん患者さ
んの約25%はEGFRと呼ばれる遺
伝子が変異し異常に活性化して
います。そのような患者さんに
対する治療薬として、がん分子
標的薬であるEGFR阻害薬が開発
されました。今では複数のEGFR
阻害薬が臨床で使用されていま
す。このEGFR阻害薬による治療
は高い確率で奏効するものの、
一部のがん細胞が生き残り、EG
FR阻害薬への耐性を獲得して再
び大きくなることが問題となっ
ています。これまでに多くの研
究グループが、EGFR阻害薬に耐
性化する原因を見つけ出し、そ
の研究成果をもとに耐性化した
がん細胞にも効く新世代薬が作
られてきました。しかし、新世
代薬にも再び耐性が起こり、新
薬開発と耐性化とのいたちごっ
こが続いています。

さらに、最近の研究から、がん
治療における「治療抵抗性細胞」
の存在が明らかになり、がん研
究の領域において注目を集めて
います。この治療抵抗性細胞は
治療開始時から薬の効果が低く、
薬による細胞死を免れることが
知られています。肺がん治療に
おいても、その解明と診断・治
療法の開発が大きな課題である
と考えられます。

研究グループはこれまでに、治
療抵抗性細胞の原因として、普
段は眠っている蛋白質AXL が、
別の蛋白質であるEGFRやHER3と
一緒になることで活性化し、肺
がん細胞が生き延びるための刺
激を維持していることを明らか
にしてきました。今回、研究グ
ループは、新世代のEGFR阻害薬
であるオシメルチニブやダコミ
チニブにさらされたがん細胞が
生き残る原因である蛋白質AXL
の活性を阻止する新規治療薬ON
O-7475の有効性を明らかにしま
した。今回の研究で使用した薬
剤ONO-7475は、小野薬品工業で
創製され、現在、早期臨床試験
が進められており、臨床応用が
期待されています。

EGFR遺伝子変異を持つ肺がん細
胞株を移植したマウス動物実験
モデルにおいて、AXL を抑える
ONO-7475をEGFR阻害薬と併用し
た結果、がん細胞をほぼ死滅さ
せ再発を著明に遅らせることが
明らかになりました。新世代EG
FR阻害薬の効果がなくなった後
に併用した時と比較して、これ
ら2剤を最初から併用した方が、
より高い治療効果が得られるこ
とを発見したということです。

治療前の肺がん患者さんから得
られたがん細胞のAXL を調べた
結果、培養細胞を用いた研究結
果と同様に、AXL を多く作って
いる肺がん患者さんは、そうで
ない患者さんと比べてEGFR阻害
薬による治療成績が悪いことが
判明しました。一方で、EGFR阻
害薬の効果がなくなった後の肺
がん患者さんから得られたがん
細胞のAXL を調べたところ、培
養細胞を用いた研究結果と同様
に、AXL を多く作っている肺が
ん患者さんはそうでない患者さ
んと比べて、EGFR阻害薬による
治療成績にあまり影響しないこ
とが分かったということです。
これらの結果より、がん細胞が
AXL を多く作っている患者さん
では、最初からEGFR阻害薬とAX
L 阻害薬ONO-7475併用による治
療を行うことが有用であり、EG
FR阻害薬の効果がなくなった後
から併用してもあまり効果は期
待できないと考えられます。以
上の研究結果から、EGFR阻害薬
とAXL 阻害薬ONO-7475併用によ
る治療を最初から行うことで、
がん細胞を死滅させ、肺がんを
根治あるいは再発までの期間延
長が期待されるという。

今回の研究で使用したONO-7475
は現在、早期臨床試験が日米で
進められています。研究グルー
プは今後、EGFR遺伝子変異を有
する肺がん患者のうちAXL が高
発現している患者さんを対象に、
新世代EGFR阻害薬オシメルチニ
ブやダコミチニブと併用する臨
床試験を行い、効果や安全性に
ついて評価していきたいとして
います。

肺ガンの最新治療について解説

している動画です。

 

 

 

 



 氷菓に高い味の評価を与える。















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2】 障害腸の再生の中心的な役割を担う細胞を特定











 東京医科歯科大学は5月20日、
障害を受けた腸再生の中心的な
役割を担う細胞を特定したと発
表しました。これは、同大・難
治疾患研究所・生体防御学の樗
木俊聡教授らの研究グループが、
慶應義塾大学医学部、自治医科
大学医学部と共同で行ったもの
です。研究成果は、「Scientif
ic Reports」のオンライン速報
版に掲載されています。腸管上
皮は栄養や水分の吸収に加えて、
腸内細菌から生体を保護する粘
膜バリアとして大切な役割を担
っています。陰窩には腸再生の
源になる幹細胞が存在しており、
この幹細胞はLgr5を発現してい
ます(Lgr5幹細胞)。多くのLg
r5幹細胞は常に活発に増殖し、
新しい上皮細胞を供給すること
で腸管上皮の機能を正常に維持
しています。

一方、放射線照射により損傷を
受けた腸の陰窩では、増殖の活
発なLgr5幹細胞が失われますが、
生き残ったさまざまな細胞が失
われたLgr5幹細胞を回復させ、
腸の再生に貢献すると考えられ
ています。例えば、細胞周期が
休止期にある少数のLgr5幹細胞
は「リザーブ幹細胞」と呼ばれ、
この幹細胞が腸損傷時に活性化
すること、また一部の腸管上皮
が「脱分化」して、幹細胞性を
獲得することなどが報告されて
います。これらの報告では、リ
ザーブ幹細胞や一部の腸管上皮
に特徴的な遺伝子を指標にして、
それら細胞を遺伝学的にマーキ
ングする「細胞系譜追跡法」を
用いることで、着目した細胞が
腸管上皮再生に関与することが
証明されてきました。しかし、
細胞系譜追跡法のみでは、それ
らの細胞の再生への関与は証明
できても、貢献度の大小を明ら
かにして、その結果に基づいて
最も重要な細胞を提示するには
至りませんでした。そこで研究
グループは、放射線照射によっ
て障害を受けた腸の再生におい
て、最も重要な細胞を同定する
ことを目的として研究を行いま
した。生理的な腸上皮のターン
オーバーは3~5日であり、陰窩
に存在するLgr5幹細胞によって
担われています。最初に、Lgr5
幹細胞の細胞系譜追跡が可能な
マウスを用いた検討から、放射
線により障害を受けた腸管上皮
の再生が、主にLgr5幹細胞の中
の亜集団によって担われている
ことが明らかになりました。Lg
r5幹細胞の多くは増殖している
ため、放射線照射により死滅し
ますが、わずかに生き残ったLg
r5幹細胞について単一細胞レベ
ルで遺伝子発現解析を行い、個
々の細胞の性状を解析しました。
その結果、これらの細胞は、上
皮損傷時に活性化されるYAP シ
グナルの標的遺伝子と、腸上皮
幹細胞に特徴的なWnt シグナル
の標的遺伝子の発現バランスが
多様な細胞から構成されている
ことが分かりました。Sca1分子
は、YAP シグナル標的遺伝子の
ひとつで、細胞表面に発現誘導
されます。この分子の発現を指
標に、生き残った細胞を、YAP
シグナルが強く活性化した細胞
と、弱く活性化した細胞に分け
て精製し、幹細胞としての能力
をオルガノイド培養で確認する
と、Sca1分子の発現が低い=YA
P シグナル活性化の程度が弱い
細胞の方が幹細胞としての能力
が高いことが分かりました。Sc
a1分子の発現が低い細胞は、増
殖性や幹細胞性を示す遺伝子も
発現していました。さらに詳細
な解析から、この細胞集団はCD
81を高発現していることも突き
止めました。

これらの結果から、放射線照射
によって障害を受けた腸で生き
残ったLgr5幹細胞の中で、腸の
再生に最も大きく貢献する細胞
は、Sca1lowCD81high 細胞であ
ることが判明しました。腸管上
皮の再生を担う細胞の解析は世
界的に多くの研究者が取り組ん
でいるテーマであり、陰窩に存
在する多彩な細胞集団が上皮再
生に関わることが報告されてい
ますが、その中で主要な役割を
果たす細胞は不明でした。

研究グループは今回、障害を受
けた腸で生き残った上皮細胞に
ついて、細胞系譜追跡、単一細
胞遺伝子発現解析、オルガノイ
ド培養といった最先端の技術を
組み合わせた新しいアプローチ
により、腸の再生に最も大きく
貢献する細胞を明らかにしまし
た。同研究で特定した細胞のさ
らなる解析や用いた研究手法を
応用することで、放射線照射後
の腸炎や炎症性腸疾患などの上
皮障害を伴う疾患の治療法開発
につながることが期待されます。
研究グループは、「この研究手
法は腸以外の組織で再生の起点
となる細胞の同定にも応用可能
であり、これまでの解析では明
らかにされてこなかった新たな
細胞集団の発見につながる可能
性がある」と、述べています。

幹細胞について解説している

動画です。

 

 

 

 



 懐石料理を解析する。笑















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編集後記



 京都府立医科大学が5月21日、
EGFR遺伝子変異を有する肺がん
の新規治療法を開発したと発表
したのは素晴らしい業績です。
今回、研究グループは、新世代
のEGFR阻害薬であるオシメルチ
ニブやダコミチニブにさらされ
たがん細胞が生き残る原因であ
る蛋白質AXL の活性を阻止する
新規治療薬ONO-7475の有効性を
明らかにしましたのも凄い発見
だったと思います。がん細胞の
耐性について、ここまで深く掘
りさげた研究も珍しいと思いま
す。新規治療薬ONO-7475が早期
に臨床試験に供され、そこで結
果を出して、臨床の現場に投入
され、多くの肺がんの人を救っ
て頂きたいものです。
 東京医科歯科大学が5月20日、
障害を受けた腸再生の中心的な
役割を担う細胞を特定したと発
表したのは素晴らしい業績です。
免疫のセンターは、腸であり、
腸に炎症があるからこそ、難病
を発症する人が多く出てくるの
と確信しています。西洋風の食
事(小麦製品・乳製品・砂糖の
製品を含む食物)をしていると、
小麦製品のグルテンは、グルテ
モルフィンというペプチドにな
り、乳製品のカゼインは、カソ
モルフィンというペプチドにな
ります。どちらもモルフィンと
名前が付いている通り、麻薬の
受容体に作用します。腸再生に
は、このような西洋風の食事を
しないことに尽きます。

 清貧な製品を作り上げる。笑














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